そのときに会場にいた米国人が言っていたことがおもしろくて、「イノベーションは勘違いの連鎖だ!」というんです。誰かが成功すると、「俺にもできるんじゃないか」と思う。それは勘違いのことが多いんですが、そういうやつが出てきて、連鎖していく。だから誰か1人でも成功事例が出ることがすごく大事なんです。

 日本のチーム「HAKUTO」も参加している月面探査の賞金レース「Google Lunar XPRIZE」を主催している米国のXプライズ財団は、ピーター・ディアマンディスという人が民間による宇宙開発を盛り上げようと賞金レースを企画したことが始まりですが、そのヒントはリンドバーグによる大西洋横断飛行だったそうです。リンドバーグの偉業は、実は賞金レースへの参加によって成し遂げられた。そして大事なことは、リンドバーグが飛んだ後に、航空産業が爆発的に普及したことです。

 0(ゼロ)から1(イチ)を生むのはすごく大変ですが、最初の1が生まれると、それを10や100にするのは、意外と加速しやすいということかもしれません。

「自分には無理」という考えを180度変えることができた

黒田有彩(くろだ・ありさ)氏
中学時代、作文コンクールで入賞しNASA(アメリカ航空宇宙局)を訪問したことをきっかけに宇宙の虜に。 宇宙飛行士の試験に必要となる専門分野での“実務経験”を「タレントとして宇宙の魅力を発信すること」と定め、JAXA宇宙飛行士試験の受験を目指している。 2016年11月、個人事務所兼宇宙の魅力を幅広く伝えるコンテンツを企画する法人・株式会社アンタレスを設立し代表取締役に就任。2017年4月から文部科学省国立研究開発法人審議会臨時委員に就任。出演中の番組は、放送大学「初歩からの宇宙の科学」「化学反応論」/FMヨコハマ「Tresen」など。お茶の水女子大学理学部物理学科卒。

黒田:私も勘違いかもしれないですね。

 私は、学生時代からタレント活動をしていて、オーディションに行くと、「あなたは物理学科の学生なのに、どうしてここにいるんですか?」と聞かれました。当時はうまく説明できず、ただ本能で活動しているだけだった。

 でも、宇宙飛行士の山崎直子さんに取材でお目にかかったときに、「黒田さんのように伝える仕事をしている人が宇宙飛行士になることで、もっと宇宙のことを知ってもらえる人が増えるんですよ」と言っていただいた。当時は調べれば調べるほど、宇宙飛行士ってスーパー人間ばかりで、自分には到底無理だろうなというあきらめが強かったんですが、山崎さんの言葉で、「自分なんて」という考えを「自分だからこそ」に180度変えることができました。