過剰なレバレッジが金融危機(=絶好のチャンス)をもたらす

 たしかに、金融ビジネスの強欲を制御する十分な手段が開発されていないことは、世界経済にとっての大きな課題だと言えるでしょう。マンガーによると、銀行が十分な自己資本を持つことが必要なのだが、銀行は、利益獲得を求めたレバレッジの拡大を自制することができず、これが必然的に行き過ぎるので金融危機は繰り返されます。

 金融危機は、バフェットにとってもマンガーにとっても、批判と嘆きの対象である忌まわしい出来事なのですが、一方で、これこそが、彼らに偉大な会社を適正価格以下で手に入れる絶好の機会を提供してくれます。その日のために、彼らは株価が高くなると現金を用意して、次の暴落に備えます。そして、チャンスが来たら大胆に出動する――そのためには何年も待ち続けるのです。

 金融ビジネスの行き過ぎたレバレッジに批判的なマンガーですが、一方で、その行き過ぎがもたらす「危機の恩恵」を受けていると言えるでしょう。

金融危機はもちろん忌まわしい出来事だが、バフェットやマンガーにとってはチャンスでもある。(写真:PIXTA)
金融危機はもちろん忌まわしい出来事だが、バフェットやマンガーにとってはチャンスでもある。(写真:PIXTA)

“偉大な会社”が不祥事を起こすことも……

 このたび日本語版が発売された『マンガーの投資術』(デビッド・クラーク著、日経BP社)では、比較的最近の成功例として、2008年の金融危機におけるウェルズ・ファーゴ銀行に対する多額の投資の事案が取り上げられています。

 ウェルズ・ファーゴは、他の大手銀行ほどはレバレッジに頼らず、地域に根ざした堅実なビジネスモデルを展開してきたため、銀行であるにも関わらず“偉大な会社”であるとマンガーは理解したようです。

 もっとも、このウェルズ・ファーゴにも2016年には不祥事が発覚しました。顧客の承諾手続きを経ずに口座を開設したり、クレジットカードを発行するという悪質なもので、背景には無理な営業ノルマや実績に基づく報酬体系があったようです。同行は、こうした行為に関与した従業員を5000人以上解雇し、CEOのジョン・スタンフも辞任するに至りました。スタンフの辞任については、大株主であるバフェットが「あなたが考えているよりも問題は深刻だ」と事実上引導を渡したことが決め手になったといわれています。

 この例が示す通り、金融は信用し切ることが難しい困ったビジネスなのですが、同時に、金融業はバフェットやマンガーのような投資家が活躍する機会を与えてもいるのです。

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