バフェットはグレアムに師事して投資の世界に入りました。グレアムは、いわゆるバリュー投資(割安株投資)の創始者と呼んでいい偉大な人物です。バリュー投資とは会社の価値よりも株価が割安と考えられる銘柄に投資する手法ですが、会社の正当な価値と株価の差を、グレアムはセーフティ・マージン(安全帯)と呼びました。つまり、十分なセーフティ・マージンを持った株式に投資して、株価が正当な価値まで上がるのを待つのが基本戦略になるのです。

 しかし、このグレアムのやり方では、投資銘柄の株価が首尾よく上昇してセーフティ・マージンがなくなったらその銘柄を売却しなければなりません。正直言ってこれでは大儲けできません。

 そこでマンガーは、グレアムのバリュー投資の手法を一歩進めて、次のような考えに至りました。

 「適正な価格で売られている偉大な会社は、割安な価格で売られているそこそこの会社よりも優れている」

 ある企業の株式を簿価よりも安く買えるのは結構なことです。その点には何も問題はありません。しかし、その企業の株価が簿価に達したときに株式を売ってしまえば、その後の株価上昇と配当によってもたらされるはずの大きなリターンを取り逃してしまいます。

 けれども、もしもその企業が“偉大な会社”だとすれば、十分なセーフティ・マージンが得られる水準まで株価が下落するのを待つ必要はありません。“偉大な会社”は長期にわたって利益と資産を成長させ続けることができるので、その企業の株式を長く持っていると、投資家は大きなリターンを得ることができるはずです。

 実はこの考え方は、運用業界ではグロース投資(成長株投資)と呼ばれているもので、バリュー投資とは正反対の投資スタイルとみなされています。その意味では、マンガーはグレアムの投資スタイルを真逆に変えて、それがバフェットにも受け継がれたとも言えるのです。

重要なのは「安さ」ではなく「競争優位性」

 こうした考え方をマーケットで実践するうえで一番の問題となるのは、どうやって“偉大な会社”を見つけるのかということです。この点に関してマンガーやバフェットが重視しているのが「ビジネスの永続的競争優位性」です。二人は、チョコレート菓子で知られるシーズ・キャンディーズに投資した経験から永続的な競争優位性の意味を知り、有名なコカ・コーラ株への投資によってこの概念の有効性を確信するに至りました。