メシュケ 確かにEVはリスクがあると考えています。今後5年~10年くらいはある程度の差別化は可能ですが、ご指摘のように最終的にはコモディティ化してしまう恐れがあります。しかし、EVになっても差別化は可能です。重要なのは、適切なバッテリーの「セル・テクノロジー」を獲得できるかどうかで、それによってとても大きな違いが生まれます。量産メーカーは、バッテリーの生産のコストをとにかく下げる方向に向かうでしょう。我々はそれとは違う方向性を目指さなければいけません。目指すべきはパフォーマンスの向上でありそこへの投資が必要です。それが他社と大きな違いを生むと考えています。

 なるほど、その第一弾が、もうすぐ発表されるミッションEというわけですね。具体的にどんなクルマなのでしょうか。

メシュケ ミッションEはEVでありながら、911のような加速を実現する本物のスポーツカーです。0-100km/h加速は約3秒で、最高速度は250㎞/h以上を誇ります。そうでなければ、ポルシェのスポーツカーであることの価値について説明できません。

 バッテリーはどこで開発を進めているのでしょうか。

メシュケ バッテリーに関してはポルシェ独自で開発することは不可能ですから、最高のバッテリーを得るために、ある韓国のバッテリー開発会社と緊密な協力関係を築いています。

 現時点では0-100km/h加速で3秒を切るトライは一度しかできません。2度、3度と続けては出来ない。それを実現可能にするハイパフォーマンス・バッテリーへの投資が重要になります。

 今後の開発や市場環境によってミッションEの発売スケジュールが変更になることはないのでしょうか

メシュケ そこは変わりません。初めから2019年末投入というクリアな目標設定をしており、それに向けていま準備を進めています。

若者の車離れはドイツでも同じ

 ポルシェにとっては、いまなおアメリカが最重要市場の1つであると思いますし、またジェネレーションX (1960年・70年代生まれの世代)に向けたブランディングが大変上手ですが、次世代となるいまの20代に向けた取り組みと、この15年後もポルシェが偉大なスポーツカーメーカーであり続けるためにはどうあるべきと考えますか。

メシュケ それは本当の意味でのチャレンジですね。若い世代への訴求は簡単ではありません。例えばドライブシュミレーター、ゲームなどVR(バーチャルリアリティ)は重要な要素ですし、現実世界で実際のクルマに触れてもらう体験も重要と考えています。これはドイツの話ですが、現代の18歳の若者は「クルマはお金もかかるし免許を取る必要もない」と考える傾向すら見られます。ですから、これまでとはまったく違うプラットフォームで若い世代へのポルシェのブランド価値を訴求する活動が必要です。

 その中では「4万ユーロ(約520万円)以下のエントリーモデルを作る」といったアプローチも考えられますか

メシュケ 例えば911ターボを購入する顧客には、ミドルクラスではなく、プレミアムなクルマを購入したという感情を抱いていただきたい。そうした上級モデルへの影響を考えたときに、ある程度以上の価格帯に留まることは必要だと考えています。

 一方で911ターボSやGT3、GT2など、25万ユーロ(約3200万円)の価格帯のモデルが驚くほど売れている現状があると聞きます。それはなぜだと思われますか