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今年の5月11日、累計生産100万台目のポルシェ911が本社のツッフェンハウゼン工場からラインオフした。1963年に初代モデルが誕生して以来、7世代、54年に渡って達成した偉業だ。しかし、いまやポルシェとて電動化やデジタル化の波を避けて通ることはできない。
かつてスポーツカー専業メーカーだったポルシェが、初めてそれ以外のモデルに着手したのは、2002年。旧東ドイツ領のライプツィヒに新工場を建設し、SUVのカイエンの生産をはじめた。その後、2009年にはセダンのパナメーラ、そして2013年にはカイエンよりもひとまわり小さなSUV、マカンの生産が始まった。
それに伴い、生産台数は飛躍的に伸びた。911とボクスターのみを生産していた1996年の年間生産台数は3万2390台。それがカイエンの生産がはじまった2002年には倍以上の7万3284台に、そして、2016年のグローバルでの販売台数は23万7778台にまでなっている。
2016年の販売台数の内訳を見ると、カイエンが7万867台、マカンが9万5642台とSUVコンビで約17万台となり、販売の大半を占める一方で、911も前年比+2%の3万2409台を販売しており、この数年間は右肩上がりで台数が伸びている。新ジャンルでビジネスを拡大する傍ら、コアモデルであるスポーツカーもしっかりと成長を維持し続けている、これがポルシェの強みだ。
2017年度第1四半期の数字で見ても、営業利益は、前年比8%増の9億6700万ユーロ、売上高は同2%増の55億ユーロ、コストがかさむ自動車製造業において営業利益率は17.6%を誇る。(いわゆる量産メーカーでは営業利益率10%が1つの指標であり、それをクリアしているのはトヨタやスバル、BMWなどだけだ)。財務およびIT担当の取締役会副会長であるルッツ・メシュケ氏は「この業績は、最適化された費用構造やすぐれた製品構成だけでなく、長期にわたる為替ヘッジ戦略によるものだと考えている」とコメントしている。
このルッツ・メシュケ氏はポルシェAGの次期社長とも目される人物だ。あまりメディアの前には登場しないというが、100万台達成を機にこれからのスポーツカービジネスについて話を聞くことができた。
いまポルシェにとってもっとも販売台数の多い国は、単一市場でみると中国ということになると思います。ただ市場としてはSUVの比率が高いと聞きますが(*)、中国においてもスポーツカーの売上比率を上げる計画はあるのでしょうか。
ルッツ メシュケ氏(以下メシュケ) そうですね、中国においてはSUVが売り上げの約8割を占めています。911の年間販売台数はおよそ1500台くらいしかありません。我々としては、中国市場においてもポルシェがSUVメーカーではなくスポーツカーメーカーとして認知されることが重要だと考えています。
ポルシェも参戦しているWEC(FIA世界耐久選手権)が上海で開催されていますが、それ以外にも何かほかのレース活動などをされるのでしょうか。
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