今年の5月11日、ドイツ本社のツッフェンハウゼン工場から累計生産台数100万台目のポルシェ911がラインオフした。初代911が登場したのは1963年のことだから、7世代、54年間に渡っての達成ということになる。
100万台という数字は、量産メーカーにとってはそれほど驚くべき数字ではない。例えばトヨタカローラなどであれば、1年で達成するものだ。
だが、こと“スポーツカー”となると話が違う。これまでにもスポーツカーで100万台を達成した例は、少ないながらも存在する。アメリカ市場で絶大な人気を誇るシボレー・コルベットやフォード・マスタング、日本車であれば日産・フェアレディZやマツダ・ロードスターなどがそれだ。
そのほとんどが、エンジンやプラットフォームを販売台数の稼げるセダンなどと共用化してコストを下げてきたモデル。また、近年はトヨタ・86&スバル・BRZ、マツダ・ロードスター&フィアット・124スパイダー、そして年内に発表が予定されている新型トヨタ・スープラ&BMW ・Z4(Z5とも噂される)などに見られるように、メーカーの壁を乗り越えて共同開発、生産を行うことでスポーツカーをビジネスとして成立させている。
独自性を保ちつつ100万台を達成
そうした中でポルシェは独自路線を歩んでいる。SUVのカイエンやマカン、セダンのパナメーラなどをVWグループ内のインフラを活用して生産し、高収益を得る一方で、イメージリーダーである911には開発コストをかけ続けてきた。
エンジンを車体の真ん中に配置し後輪を駆動するミッドシップ方式に近いスポーツ性能と、狭いながらも4人乗りの空間を両立するためにエンジンを後軸よりも後方に搭載するRR(リアエンジン・リアドライブ)方式を採用、そして6気筒の水平対向エンジンを搭載する。約50年間変わることなく専用エンジン、専用プラットフォームを貫いてきた。
初代から一切変わらないコンセプト、そして歴史を絶やすことなく作り続けてきたことで構築されたブランドイメージは絶大であり、それゆえ中古車市場でのリセールバリューも高く、911は生産総数の70%以上が今も走行可能な状態で現存しているという。
先日、生産100万台達成を機に、ドイツ本社にあるポルシェミュージアムが所有する初代から歴代の911を、最新世代に至っては100万台目そのもののステアリングを握る僥倖に巡り会えた。そして、80年代から911の開発に携わり、ポルシェ社内で“ミスター911” と呼ばれる開発のボス、アウグスト・アッハライトナー氏に、911の過去と未来について、興味深い話を聞くことができた。
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