前回の記事(世界的「税戦争」から取り残される日本企業)で説明したように、国際税務論争とは、多国籍企業が行うタックスプランニング(国際的な節税)に関して、多国籍企業の税に関する権利と義務、多国籍企業を誘致する低税率国の権利と義務などについて、経済協力開発機構(OECD)が中心となって進めている国際的なルール作り及び議論を指す。

 欧州委員会(EU)は8月30日、アイルランド政府が最大で130億ユーロ(約1兆4800億円)の違法な税優遇を米アップルに与えたとして、過去の優遇分や利息を追徴課税で取り戻すよう同国に指示した。その後、アイルランドはEUの判断を不服として欧州司法裁判所に提訴することを決め、米政府もこの決定を「一方的」と非難した。このように、近年、国際税務をめぐる動きが特に熱を帯びてきたのは、2012年後半、スターバックス、グーグル、アップルなどに関する「タックスプランニング」が立て続けに報道された影響が大きい。

 ロイターの報道によるとスターバックスコーヒーの英国法人は3年間で約1500億円の売り上げがあったものの、英国ではほとんど法人税を納めていなかったと言われている。ただ、これはスターバックスが特別なことをしていた訳ではなく、米系多国籍企業にはよく見られるタックスプランニングをしていたに過ぎない。スターバックスは法を順守していたが、消費者感情などを考慮してその後、イギリスでの納税額を増やすために再編するに到っている。

OECDで始まったBEPSプロジェクト

 2012年6月に行われたメキシコG20サミットでは、「税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、BEPS)」の議論の必要性について確認され、OECDにおいてBEPSプロジェクトが開始された。「税源浸食と利益移転」は何やら難しそうに聞こえるが、要するに、これまで触れてきたとおり、多国籍企業が他の国に利益を移転してしまって、自分の国の税源を他の国にとられてしまう問題、ということだ。

 その後、OECDのBEPS議論は再びサミットでも取り上げられ、先進国を中心としたOECD加盟国のみでなく、低税率や優遇税制で多国籍企業を誘致してきた新興国も加わり世界的な議論となった。OECDは2013年には15の行動計画を承認し、数回に分けて提言を公表している。

OECDのBEPS行動計画による提言
(国税庁ホームページの情報に基づきベーカー&マッケンジー法律事務所にて作成)