依然続く税率の引き下げ合戦

 現在の法人税率に関しては、世界的に二つの傾向が見られる。一つは、世界的に税率の引き下げ競争が続いていること、もう一つは、多国籍企業の本社を多く抱えているような国(主に先進国)では税率が高く、それ以外の国では税率が低い傾向にあることだ。

 タックスプランニングに最も熱心なのは米系企業であるが、税率が約40%と世界一高いのも米国である。日本も長年、米国と並び40%程度を維持してきたが、安倍政権下でこのところ毎年、法人税率を下げ、現在30%程度でドイツと同レベルにある。フランスは早くから約33%を採用しており、過去には比較的低い方であったが、税の引き下げ競争の進んだ今となってはむしろ、高い方に分類される。

 例外的なのはイギリスである。サッチャーの税制改革以降、一貫して税率を下げ、多国籍企業の誘致に励み、場所は提供してもプレーヤーは外国人ばかりというウィンブルドン現象が見られるのは周知のとおりである。イギリスの税率は現在20%だが、EU離脱により現在、英国に多数ある多国籍企業の欧州統括本部が他国に移転してしまうことを懸念して更なる引き下げを予定している模様である。

 一方、多国籍企業を誘致する側の国としては、アジアならシンガポールが代表的な国の一つである。シンガポールの税率は17%だが、実際には多くの企業に優遇税率を適用しており、5%あるいはそれ以下の税率が適用されている企業もある。ヨーロッパでは、今回アップルへの追徴課税をEUから指示されたアイルランドが低税率で知られ、12.5%を採用している。また、オランダやルクセンブルグも様々な税制上の優遇制度を設けて多国籍企業を誘致している。

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