機器を専用の装置に近づけるだけで充電が可能になる「ワイヤレス給電」。電動歯ブラシなどに限られていた活用がスマートフォンやEV(電気自動車)にも広がってきた。発熱ロスの少ない制御ICや異物検知システムなど、新技術の開発が進んだためだ。
米アップルは次にどんなイノベーションを起こすのだろう──。アップルファンの間で今、未来のiPhoneに搭載される新機能は何かに注目が集まっている。有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)ディスプレーの採用と並び、最有力候補と目されているのが「ワイヤレス給電」だ。
ワイヤレス給電とは、機器を送電装置に近づけるだけで充電できる機能を指す。充電のたびにいちいち電源ケーブルをつながずに済む上、カフェやコンビニエンスストアなどに送電装置が常備されるようになれば、外出時にケーブルを持ち歩く必要もなくなる。
ワイヤレス給電の搭載は、機器を設計する上でも有利に働く。接続端子をなくせるため、ホコリが機器内に入って誤作動を起こすリスクを減らせるほか、防水機能を持たせやすくなる。
ユーザーの利便性を大きく高める可能性を秘めたワイヤレス給電。それを実現する原理自体はそれほど複雑なものではない。最初に普及が見込まれているのが「電磁誘導」を用いた方式だ。
電磁誘導とは、コイルに電流を流して磁場を発生させ、その磁場にもう一つのコイルを近づけると、近づけた方のコイルにも電流が流れる現象のこと。送電装置と機器の双方にあらかじめコイルを仕込んでおけば、送電装置に電流を流すだけで機器側も電流が流れ、充電することができる。
東芝は、ワイヤレス給電の実用化に向け、技術開発を進める。これまでスマートフォン(スマホ)などで実現できなかったのはワケがある。「従来の技術では、出せる出力が最大でも5ワット前後と小さすぎた」(東芝ミックスドシグナルIC事業部の堀英司参事)からだ。
充電に長時間を要するため、使用が電動歯ブラシや電動ひげそりなどに限られてきた。これらの機器は使用時間が短い上、送電装置の上に長時間置きっぱなしにしても差し支えない。消費電力が他の機器より大きく、「持ち歩くパソコン」とも呼ばれるスマホでは到底、使えなかったのだ。
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