宇宙から高精度観測

 重要な役割を果たすのが気象衛星「ひまわり8号」だ。2014年に打ち上げられ、地上3万6000kmから日本周辺を定点観測する。

 米航空宇宙局(NASA)が開発した観測センサーを世界で初めて搭載し、観測できる最小範囲が500m四方とひまわり7号時代の1kmに比べ精細になった。

 処理速度も速くなり、従来30分間隔だった観測の頻度は最短2.5分間隔まで短縮。台風の目が渦巻く様子なども捉えられるようになった。データ伝送量は従来の50倍に増え、白黒だった画像もカラーに変わった。「より細やかに台風の進行方向を予測できる」と開発を担当した三菱電機の西山宏・ひまわりプロジェクト部長は胸を張る。

 さらにより広く、地球全体での気象状況を観測し、未来をシミュレーションしようとする試みも始まっている。実現すれば、大規模な自然災害から気候変動まで予測できるようになる。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)やNASAが参加する国際プロジェクトの全球降水観測計画(GPM)では、約10基の人工衛星で世界中の降水状況を1時間ごとに観測する。

 計画の中心となるJAXAが2014年に打ち上げた「GPM主衛星」。国際宇宙ステーションとほぼ同じ高度400km付近で地球を周回する。

 搭載する二周波降水レーダーはJAXAなど日本勢が開発し、2種類の周波数の電波を照射する。どの高さに雨が降っているかという立体観測が可能になり、これまで難しかった弱い雨も捕捉できるようになった。

上空からの観測能力も向上
●最新気象衛星の概要
(写真=上:三菱電機、下:NASA)

 集めた降水情報は世界に無償提供する。今年3月からは気象庁によるデータ利用が始まったほか、パキスタンやフィリピンなどでは洪水予報に向けた利用準備が始まっている。「地上レーダーの配置が進んでいない途上国などからの需要が今後増えていくだろう」とJAXAの古川欣司プロジェクトマネージャは話す。

 ゲリラ豪雨を予想する理研のチームと共同で、GPMプロジェクトのデータを使い世界規模で雲の動きをシミュレーションする研究も始まった。ビッグデータを活用して世界中のあらゆる場所の雨模様を、コンピューターが正確に予想できる時代が、近い将来やってくるかもしれない。

(日経ビジネス2016年6月27日号より転載)