計算結果を実測データで検証

 データの送り先は、理研が運用するスーパーコンピューター「京」だ。世界トップレベルの処理速度を誇る京を使い、どのような雲が、どこに、高度何百mに発生するのかをシミュレーションする。その結果、1時間当たり何mmの雨が降るのかも予想する。

 ただ、雲の発生から降雨などの自然現象を数式に完全に落とし込むことは非常に難しい。「自然の動きほど複雑なものはない」と三好チームリーダーは頭を悩ます。当初は、実際ではあり得ない高さでの雨雲の発生を予想するなど、失敗を繰り返してきた。

 そこで研究チームは、京がはじき出した予想値と、実際の観測値を一定時間ごとに比較し、誤差が少なくなるように計算方法を修正する「データ同化」と呼ぶ手法を採用した。

 この取り組みが徐々に功を奏し、上の画像で示した通り、30分先の降水分布を高い精度でシミュレーションできるようになった。100m四方ごとのピンポイント天気予報も現実味が増してきた。

 課題はまだ残っている。1回のシミュレーションで解析するデータ量は数百ギガバイトに及ぶ。次の最新データがレーダーから送られてくる30秒間にこれらの処理が終わらなければ、未処理データが積み上がって、システムがパンクしてしまう。

 現状では京を用いても処理時間は長過ぎる。プロジェクト開始当初は3000秒(50分)、現在でも700秒(12分弱)を要している。さらに20分の1以下に処理時間を短縮する必要がある。

 使用する観測データを絞り込んだり、データの読み書き効率を高めたりするなど改善余地は多いという。30秒という目標達成への道のりはまだまだ遠いが、「実現性はかなり見えてきた」と三好チームリーダーは自信を見せる。

 見据える先は2020年。東京オリンピック・パラリンピックでの採用を目指している。ゲリラ豪雨を予想することで、安全に競技ができるかを判断できるようになる。

 気象予想では、短期的な天候変化だけでなく、大型台風の進路予想など数日先の分析も重要度が高い。土砂災害や河川の氾濫が見込まれる地域に早いタイミングで警報を出せれば、避難に時間がかかる高齢者の助けにもなる。

シミュレーション精度は高まっている
●神戸市でのゲリラ豪雨の事例
(写真=2点:理化学研究所)