(日経ビジネス2017年5月29日号より転載)

 重要な発明が他の発明と結びついてさらに加速度的に技術が進化する「収穫加速の法則」がちょっとした話題になっている。産業の大きな変化は、決して未来の話とは言い切れないのだ。訪れるのは豊かな未来なのか──AI(人工知能)に薄ら恐ろしさを感じる人にもおすすめの、5年後に備えるための3冊を紹介しよう。

 帯に「人類の生活と常識は、根底から覆される!」と刺激的な文言が並ぶのが『第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来』だ。自動運転、3Dプリンター、先進ロボット工学、新素材を4つのメガトレンドと定義して、訪れるであろう技術の進化を予測する。

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来
クラウス・シュワブ著 世界経済フォーラム訳
1500円(日本経済新聞出版社)


ダボス会議の創設者が有識者とのディスカッションで、これから起こる次の産業革命について解説する。

 本書の見どころは、将来の様子を技術だけでなく人々の視点からも追求しているところだ。社会や労働、文化への影響から、国家や世界がどう変わるかも考えていく。例えば、2025年までに体内埋め込み式携帯電話が登場する可能性が高いと予測し、それによって行方不明の子供の減少や意思決定能力の向上をプラスの点として掲げる。逆に、多くの新技術のネガティブポイントが共通してプライバシーの侵害や監視となっている。私たち自身は、技術ほど簡単に進化できないだけに、新しい倫理観についてもう少し掘り下げてほしかった。

新技術は何をもたらすか

 『2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する』は、エコノミスト誌の筆者や編集者をはじめ、メリンダ・ゲイツ(ビル・ゲイツの妻)までが著者に名を連ねている。新技術を並べて解説するのではなく、新しいテクノロジーの普及によって起こることや影響を詳しく解説する。例えば、アフリカの経済がスマートフォンによって変わるといったくだりは、すでにある技術による影響なので、2050年を待つこともないだろう。

2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する
英『エコノミスト』編集部著 土方奈美訳
1700円(文藝春秋)


20の分野についておよそ30年後の未来を予測する。自動運転やAIなどによって私たちの生活がどう変わるのか興味深い。

 AIについても、人間が使い方を誤らなければ怖くないことや、その理由を解説している。内容は充実しているが、400ページ近い量なので、興味のある部分を拾い読みしてもいい。