それは凄い! どんな匂いですか? 革ですか、接着剤ですか?
アレックス:接着剤、カーペット、プラスチック、そして革。それぞれの年代で匂いの違いがあります。70年代の革は現在と比べるととても分厚くて、革の染め方も今とは違います。革は時代を経るごとに薄くなってきていますし、耐火素材がなかった70年代にはコーデュロイが使用されていたこともあります。
アレックスさんが一番好きな匂いは?
アレックス:70年代の内装が総本革のものですね。野生動物の様な匂いがします(笑)。928は特別ですし、944は全く違う匂いがします。明日ミュージアムを案内しますから、嗅ぎ分けてみましょう。
なんだかワインみたいですね(笑)。あと、色の話も。70年代は911だけでなく914など、オレンジやグリーンなど派手な色が多いイメージがありますが。
アレックス:それは当時流行っていたからです。特に914は、ゴルフGTIなどと同じく、若くスポーティな顧客向けでした。また、当時ドイツ政府は交通安全のために明るいボディカラーを推奨していました。ですから誰も黒は欲しがっていませんでした。そして、車体にストライプを入れる事もできました。注文時に特別なオプションコードがあって、特徴的な外観になりました。これもドイツ政府の視認性向上の方針によるものでした。
ポルシェ博士は1900年からEVを作っていた
ストライプを政府が推奨って、いいですね。ところで今後はミッションEをはじめポルシェも電動化が進むわけですが、クラシックカーの担当としてはどう思われますか?

アレックス:大いなるチャンスととらえています。356から始まり、911やその他のモデルは常に時代の先をいくものでした。特に928は70年代では革新的なモデルだったと思います。ミッションEもこのツッフェンハウゼンという、ポルシェのゆりかごである場所で、作られます。例えば工場を海外に建てて財政的なメリットを取ることもできますが、私たちはブランドが成長したこの場所で、生産を続けるのが正しいことだと考えています。
しかし、ポルシェファンの中には内燃エンジンこそポルシェだと電動化に反対する声もあります。
アレックス:反対の声があることも理解しています。ただ、私たちの原点には2人のエンジニアがいました。1人目はフェルディナント・ポルシェ博士、種々のアイデアを持つ天才です。そして、2人目はその息子のフェリー・ポルシェです。彼によってポルシェのスポーツカーは生み出されました。ポルシェ精神と呼ぶべきものは、常に時代の先をいくエンジニアリングにあるのです。
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