アレックス:あの356はプロトタイプで、最後のテストはオーストリアで、工場がそのまま所有していたものでした。1949年頃まで工場が所有しており、その後スイスの資産家に売却されました。個人所有となり50年代中ごろまで使用されたようですが、外で保管されたため車はくたびれてしまい、少し浸水したりしていました。1958年に、ポルシェは、この356 No.1を買い戻す決定をし、当時の最新の356と交換をしました。その時から会社のコレクションです。売却してから10年後に戻ってきたわけです。

先日、イギリスで行われたグッドウッドフェスティバルでも披露された356 No.1。後ろに見える黄色のクルマが、73年式のカレラRS。日本でもファンの多い通称ナナサンカレラ

356の第1号車というのは、356としては唯一のミッドシップだと聞きました。

アレックス:そうです。この1台目がプロトタイプのミッドシップで、その後の量産車はリアエンジンになりました。リアエンジンはいまの911に、そして、このミッドシップは550スパイダーやいまのボクスターなどに引き継がれています。

ところで……356ってどういう意味なんでしょうか?

「355」はポンプの番号だった!

アレックス:ポルシェはスポーツカーを製造する前にいくつかの変遷があって、Porsche Construction Limitedという会社で、エンジニアの技術を生かし顧客の要請に応じた製品を製造していました。例えば発電機や農業用機器などです。受注ごとにそれぞれ番号が割り当てられていて、355は水を吸い上げるポンプ、356がこのVW社向けのスポーツカー、357はまた全く別の製品だったのです。つまり、この番号は「単に割り当てられたもの」なんですよ。

356番目の受注番号だったとは! で、後継が358とかにはならなかったと。

アレックス:その後、ポルシェ社内でも後継モデルが必要と考えられていましたが、構想から量産準備まで5~6年かかりました。ちなみにその後の550は車両重量を550㎏以下にするという意味でした。

それでは911にはどういう意味があるのですか?

アレックス:そもそもは部品番号で、800番台までは、すでにVW社のパーツに使用されていて、それで900番台にしよう、となったようです。とても機械的な理由でした。

で、900番台の一番最初だから、901になったと。