7月30日、WRC (FIA世界ラリー選手権)第9戦ラリー・フィンランドの表彰台のてっぺんには、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)の姿があった。18年ぶりにカムバックしたWRCの舞台で、復帰初年度ながら2勝目を挙げたのだ。
ルマンでは勝てないトヨタが、WRCでは強い。
その要因は何なのか。ここで少し紐解いてみたいと思う。
いまトヨタが参戦している世界選手権は2つ。1つがルマン24時間レースをはじめとするWEC(FIA世界耐久選手権)(今年のルマンでの豊田章男社長へのインタビュー記事はこちら)。そしてもう1つがこのWRCというわけだ。
トヨタのモータースポーツ活動は、豊田章男社長体制となって以降、明確にそのカタチを変えてきた。トヨタの開発ドライバーの選りすぐり、“トップガン”を務めていた成瀬弘氏(なるせ・ひろむ氏、故人)の指導のもと、運転スキルを磨き上げた豊田社長は、2007年にはじめてニュルブルクリンク24時間レースに挑戦する。この時のチーム名は、豊田社長が課長時代に手掛けた中古車の画像(がぞう)を使ったシステム、GAZOO.comに由来する、GAZOOレーシングだった。当時はまだ公式にはトヨタの名を冠していなかったのだ。
このころのトヨタにとって世界選手権の場は、F1だった。しかし、リーマンショックの煽りを受け、トヨタの2009年3月期の決算は59年ぶりの赤字となり、2009年シーズンをもってF1から撤退することになった。
2012年、トヨタはプロトタイプレーシングカーとしては初のハイブリッドカーを開発し、WECに復帰する。この詳細な経緯はこちらを参照していただきたい。
実はこの年、2012年、豊田社長はドライバー「モリゾウ」として、愛知県で開催された全日本ラリー選手権、新城ラリーでラリーデビューを果たしている。そして、モータースポーツ活動を通じての“もっといいクルマづくり”や人材育成の強化といったメッセージがより色濃く発せられるようなってきた。
2016年、トヨタは、“もっといいクルマづくり”とそれを支える人材育成を促進するため、カンパニー制を導入。中短期の商品計画や製品企画はカンパニーが担う体制とした。製品群ごとに「先進技術開発カンパニー」、「トヨタコンパクトカーカンパニー」、「ミッドサイズビークルカンパニー」、「CVカンパニー(トヨタ車体)」、「レクサスインターナショナル」、「パワートレーンカンパニー」、「コネクティッドカンパニー」の7つが設けられた。
そして今年4月、新たに組織体制が見直され、それまでヘッドオフィス直轄の一部署であった「TOYOTA Gazoo Racing ファクトリー」が、独立して「GAZOO Racing カンパニー」(以下GRカンパニー)となった。これは何を意味するのか。
ラリーフィンランドの表彰台にトヨタの代表として登ったGRカンパニープレジデントの友山茂樹専務に話を聞いた。(文中一部敬称略)
優勝と3位という素晴らしい結果で、おめでとうございました。表彰台に登られた気分はいかがでした?
友山:日の丸が掲げられて、君が代が流れたときには、感動しましたね。日本を代表しているんだと身が引き締まる思いがしました。実は2年前にもこのラリー・フィンランドに視察にきて、そのときはVWのオジェ選手といまうちにいるラトバラ選手が表彰台にあがっていて、「いつかこういうことができればいいな」と思っていたんです。でも当時は、まだファクトリーもクルマの設計図もない状況で、本当にできるのかなという不安もありましたけど、それを考えると奇跡に近いですよね。
豊田章男社長自身がラリーにも出られたりしていますが、やはりWRCへの復帰は社長の思いが強いのでしょうか。
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