(日経ビジネス2017年6月19日号より転載)
職場うつ、過労死、パワハラなど職場のメンタルヘルスが社会問題になっている。管理職が部下の心の健康に注意を払う必要が強く求められる中、空気が読めない、気持ちが通じない、すぐ落ち込む、人のせいにするなど組織の中で問題視される人材をどう活用するかは悩ましい問題だ。
しかし社会は強烈に「心のバリアフリー」と「上司のメンタルヘルスに関する管理責任」を求めている。まず重要なのは、職場で問題視されるスタッフがどんなバリアーを抱えて悩んでいるのかを正しく知ることだ。よく耳にするようになった発達障害はおもにアスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム障害(ASD)と、注意欠如多動性障害(ADHD)を指す。これらの障害には強いこだわり、多動・衝動的な行動、共感性の欠如などの特徴があり、それが原因となって孤立やいじめ、引きこもり、出社(登校)拒否、薬物依存など深刻な状況に陥ってしまうこともある。
『発達障害』は、ASDやADHDをはじめとする発達障害の患者と向き合い、診療を続けて来た精神科医である筆者が、その経験をもとに実例を挙げながら分かりやすく解説する。発達障害の原因、特徴、診断基準、薬物治療から、自立に向けたデイケア、キャリアサポートなどについて臨床医の立場から多面的な情報も提供している。
多様性を受け入れる職場へ
『ADHDでよかった』は、幼少期から衝動的な行動や多動、好きなものへの強い執着などがあり「困った人」といわれ続けた筆者が、世界銀行のコンサルタントに採用されるなど、ADHDを克服するまでの紆余曲折を生き生きと描いている。アポイントメントの入れすぎ、安請け合い、忘却癖などを克服するために筆者が考えたスマートフォンを活用してのADHD攻略法は、通常のビジネスシーンでも参考になりそうだ。
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