ハイテク産業が貿易摩擦の標的に

 米国は、中国の国策「中国製造2025」および中国政府が巨額の補助金を投入して育成しようとするハイテク産業を今次貿易摩擦の標的にしているように思われる。他方、4月のボアオ・アジアフォーラムで習近平国家主席は、自動車輸入関税の引き下げや外資出資制限の緩和に言及し、対米貿易黒字の削減に協力する姿勢を示していた。中国政府は貿易摩擦のエスカレートを望んではいない。しかし自国産業の発展や国民感情を配慮すれば、米国の対中強硬策は到底受け入れられないものだ。

 中国商務省は、米国の関税発動が在中国の外資系企業を含む世界の産業サプライチェーンに悪影響を及ぼすと非難した。追加関税による両国の輸入コストの上昇は幅広い製品の価格上昇を招くおそれがあり、米中自動車産業に貿易依存度の高い日系サプライヤーもその影響を避けられない。

 米国で生産する日本高級車の対中国輸出台数は多くないため、米中貿易摩擦が日本の自動車貿易に与える影響は当面大きくない。むしろ中国高級車市場では、米国産自動車のコストアップが日系高級車販売に好機をもたらし、たとえば、トヨタレクサスの販売台数増加が期待される。

 一方、高関税の対象が自動車部品にも広がると、日系企業が米中における自動車部品や車載電子の調達、部材・設備の供給の両面でリスクを抱えることになる。また、今後米中貿易摩擦が持久戦に突入すれば、それは為替市場にも変動を及ぼし、日本の自動車産業にとって新たな不安材料となる可能性がある。しばらくは米中両国の政策動向や各国政府の対応から目が離せない状況が続きそうだ。

湯進(たん・じん)氏
みずほ銀行国際営業部主任研究員・博士(経済学)

2008年入行時より国際営業部に所属。自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国地場自動車メーカーや当局とのネットワークを活用した日系自動車関連企業の中国ビジネス支援を実施しながら営業推進業務に従事。また継続的に中国自動車業界に関する情報のメディア発信も行っている。(関連情報はこちら

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