中国自動車産業への影響は

 17年の中国産自動車の対米国輸出台数は5.3万台にすぎず、輸出額にしても14億ドルにとどまった。それでもGMが上海汽車との合弁で生産したSUV Envisionは対米国自動車輸出台数全体の6割を占め、米国の追加関税によるコストアップは合弁企業の収益に少なからず影響を与える。一方、中国で生産したボルボのセダンS60やBYD汽車の電気自動車も米国に輸出されているが、これらの台数は少なく、両メーカーへの影響は限定的であろう。

 他方で、完成車メーカーと比べて輸出の比重の大きい中国の自動車部品メーカーは甚大な影響を受けるとみられる。特にタイヤやホイールなど走行関連部品および車載電子部品は、自動車部品の対米国輸出額の4割超を占める。追加関税によるコストアップを安易に車両価格に転嫁し難いため、関連部品メーカーの収益圧迫が懸念される。また、長引く米中貿易摩擦は中国企業の米国進出を妨げており、19年の米国進出を宣言した広州汽車、21年に米国販売を計画する長城汽車の両社は米国事業の遅れを余儀なくされている。

2017年の国別中国自動車輸出・輸入台数(台)
輸出台数輸入台数
1イラン250,324日本345,944
2バングラデシュ84,469米国280,208
3チリ62,089ドイツ254,242
4メキシコ59,866イギリス115,461
5ベトナム55,192ハンガリー42,469
6米国53,284イタリア38,861
7インド45,030スロベニア32,515
8ベルー32,581メキシコ19,917
9ロシア32,197スウェーデン16,065
10エクアドル26,231フランス14,397
出所:中国海関統計より作成

 米中貿易摩擦の長期化は今後、両国自動車産業に2つの変化をもたらすものと考えられる。1つ目の変化として、欧米系高級車メーカーが中国における生産をいっそう拡大し、中国高級車市場の成長を後押しすることが挙げられる。中国政府は7月から完成車の輸入関税を25%から15%に、部品の輸入関税を25%から6%に引き下げた。米国製自動車の他国製自動車に対するコストアップ、および中国における輸入部品の調達コスト減を勘案すれば、米国製高級車の中国生産が今後増加するものと予想される。実際BMWは4月、米国で生産するX3の中国での生産を発表、フォードには長安汽車との合弁で高級車ブランドリンカーンを19年に中国で生産する計画がある。

 予想される2つ目の変化は、中国のNEVシフトが加速することだ。14年から中国で輸入車販売を開始したテスラは、中国政府のNEV補助金政策から除外されたにもかかわらず、17年の対中輸出台数を前年比4割増の1.7万台に伸ばし、中国のNEV高級車市場を席巻している。しかし輸入車は追加関税の対象となり、これはテスラにとって痛手だ。

 他方、年産50万台規模の上海工場建設を発表したテスラが、中間所得層向けのモデル3を中国で量産すれば、未熟な地場NEVブランドに大きな打撃を与える。テスラが中国市場に浸透したとき、消費者のNEV認知度も高まるはずだ。中国の報復関税は、自国NEVメーカーを育成しようとする中国政府からすれば、自国NEVメーカーに対し、テスラにキャッチアップするタイムリミットを設けたといえよう。