米国の対中自動車輸出トップモデルである米国製造のBMWX5

 テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は7月10日、1年前から検討を続けてきた電気自動車の中国生産について上海市政府と合意した。背景には、一向に収まりのつかない米中貿易摩擦の問題がある。

 米国は7月6日、中国による知的財産権への侵害を理由に、自動車や産業ロボットを含む総額340億ドルの中国製品に対し25%の追加関税を発動。これを受け中国も同日、自動車や原油など同規模の米国製品に同額の追加関税をかけた。高関税による米国産自動車のコストアップが懸念される中、今後米中両国の貿易摩擦をめぐる報復合戦がエスカレートすれば、その影響は米中自動車産業にとどまらず、日本を含む世界の自動車産業にも波及することが予想される。

ドイツ自動車メーカーにも影響

 中国が報復関税を発動したことにより、米国の自動車メーカーは直ちに影響を受け始めた。17年の米国製自動車の対中国輸出台数は28万台。対日本に次ぐ第2位であり、輸出額は131億ドルと対ドイツを抜き第1位となった。こうした状況下で中国は米国製自動車に40%の関税を課税。消費税額や付加価値税額も上昇した結果、米国製自動車の中国販売価格は1台当たり1~3万ドル程度上昇する見込みだ。自動車メーカーは、その価格上昇分をディーラーに転嫁するか、自社で負担せざるを得ない。

中国追加関税後の米国産自動車値上げ幅(円)
企業名モデル値上げ幅(円)
フォードF150204万
フォードリンカーンNavigator294万
ダイムラーベンツGLE181万
ダイムラーベンツGLS242万
BMW X6221万
BMW X5249万
テスラモデルS75DX231万
テスラモデルP100D425万
出所:小売価格に基づき筆者推算 1元=16.6円

 高関税は米国自動車メーカーに限らずドイツ自動車メーカーにも影響を与える。BMWは米サウスカロライナ州で多目的スポーツ車(SUV) Xシリーズを生産、ダイムラーは米アラバマ州でベンツGLS・GLEを生産する。両社の米国工場の対中国輸出台数は17年に計17.5万台で、米国の対中国自動車輸出台数全体の62%を占める。

 米中貿易摩擦の激化による輸入自動車部品のコストアップも勘案すれば、自動車メーカーの一部には今後、生産拠点を米国から第三国に移転する動きが出てくるものと予想される。その先行事例として、6月米国外に生産拠点を移転する方針を示した米二輪メーカーのハーレーダビッドソンが挙げられる。

 9年連続で新車販売台数が世界首位となった中国は、米国自動車メーカーにとっても当然重要なマーケットである。17年のGMの中国販売台数(404万台)は同社の世界販売全体の42%を占め、同社の高級車ブランドであるキャデラックでは同49%を占めた。しかし米中関係が悪化した場合、中国の消費者が米国車を敬遠する事態が想定されるほか、中国政府主導で拡大する新エネルギー車(NEV)市場で米国の自動車関連企業が排除されるおそれもある。

2017年のブランド別米国製自動車の対中輸出台数(台)
出所:中国海関統計より作成