飯田:2015~2016年に米国に滞在していて、授業をすることもほとんどなく、日本に比べて忙しくなかったので、じゃあネットで応募できるしと、毎年1500本送っていたんです(笑)。

梅田:なかなかですね。

飯田:でも結局ね、面白いことに、1年目の方が一次通過率とか全然いいんですよ。倍くらいいいんです。45~46本通ったんですね。2年目は19本しか通らない。
 その理由を考えると、やはり日本にいないからなんです。日本にいないので、日本のトレンドももちろんわからないし、それこそ「文脈」がわからないんです。

梅田:なるほど。

飯田:日本語で話しているし、日本語がいちばん得意な言語ではあるのだけれど、広告って生き物だから、そういう空気の中で発せられて初めて力を持つ、命を吹き込まれるところがあって。
 2年目はブラックボックスの中にいるようで、商品も買えませんし、ネットで調べてもわからないことがありました。日本に帰ってきて、改めてやはり日本の広告に囲まれているというのがすごく大事な環境なんだなと思いました。

梅田:アカデミアでおやりになっている方が自分なりの論をお持ちで、それで宣伝会議賞とか通過し始めると、それでビジネスされたら面白いんじゃないかなって思うんですけど。

飯田:あはは(笑)。ビジネス、新商売ですかね。講義してね(笑)。

“子育て”がいちばん大切

梅田:僕らは論がないんですよね。そこを作らないといけないのですけれど。
 プロを名乗るのであれば、本当は毎回80点を出さないといけないはずなんですね。ただ、毎回80点出せない人が多い。そこがいちばん課題であるはずなんですが、競合があるとか、忙しいとか、いろいろな言い訳があります。
 僕は絶対に自分の仕事では80点以上を取る。そのためには自分なりのノウハウを加えていかないといけない。それを基にいくつかやってきて、うまく行っているので、じゃあそれを本にしようと。僕の思考の中ではそうなんです。

 だからこそ、飯田さんがやっている「本当にここまで考えれば、ある程度のことはできるはずだ」というものを、どうやって皆に配っていくのかを考えることは、生み出してしまった以上、責任だと思いますよ(笑)

飯田:「子育て」しないとね(笑)。子育てがいちばん大切、大変ですからね(笑)。
 学者でこういうコピーに足を踏み入れている人はいないんですか?

梅田:僕の知っている中だとやはり経営です。経営の中で、クリエイティブもちょっとやっていたりですとか。表現まではいかないで、消費者行動論といったところで止まっていますね、皆さん。または「クリエイティブ領域と呼ばれているところには、私には才能がないから踏み込めません」と躊躇(ちゅうちょ)されている方がすごく多いと思います。
 でも、人間というのはこういうふうに動くものだから、企業は人を中心にこう考えるべきなのではないかというところまでは、経営学の中では皆さん認識しています。

飯田:梅田さんの考えていることと、すごく重なっていますよね。

梅田:はい。やはりゼロから10の話に帰着してしまうんですけれども。
 常にゼロから10を考えることはもうできない、と僕は思っているんです。1年に一つか二つくらいいい仕事ができるとすると、定年まで仮にあと20年と考えると、もう40個くらいしかいい仕事ができないことになるんです。それを考えるならば、ゼロから3、ゼロから6くらいのものを、アカデミックに正しいことも含めて、きちんと体系化していかなくてはならない。
 6からスタートできれば、今まで1個か2個だったものが、もしかしたら3に増えるかもしれない。もしくは、それを広げることによって、自分の業務としては1しかできないかもしれないけれど、僕がゼロから6まで積み重ねてきたものを若者にインストールして、彼らが1年に1個でもやってくれれば、100人いたら100個になりますよね。その方が世の中のためになるのではないかと思い始めています。