飯田:でも、自分では意味がないと思ったコピーが、「意外といいね、これ」と採用されることはないですか?

梅田:若い頃はありました。それは恐らく、考えることよりも書くことに一生懸命になっていて、自分が今、何を書いてるかわからないというところまで来ていたんだと思います。そこで冷静な目が入ることによって、「これ、実はいいと思うよ」と言われる状況だったんです。
 でも、僕はもう13、14年目になってきたので、それではダメだという側です。これを言うべき、だからこれを表現するという。100本そろえることより、本当に届く1本をどう作ることができるのか。そのための試行錯誤の100本をやっている感じです。同じ「100本」でも、その意味がかなり変わってきています。

「100本」の意味

飯田:なるほど。若いクリエーターの人はとにかく100そろえたり、ちょっと面白いことを言ってやろうといったことがメインになってしまって、メッセージ性がちょっとブレてしまったりするのでしょうね。

梅田:そうなんですよね。それが、広告が独りよがりになっているいちばんの原因だと思います。

飯田さんは「2000年からちょっと広告表現が変わった」と仰っていましたが、具体的にはどんなふうに変わったのですか?

飯田:やはりネットを意識するようになってきたという感じです。検索されやすい言葉を入れるとか、あるいは、バナーにした時に目移りがいいとか、キレイに収まるとか、画面での見映えが重視されていると思います。ツイッターなどSNSが出てきた後には、言葉いじりが始まったかなという感じはしていて。
 それまではCMソングにするとか、有名人に言わせて流行語にするといったことがメインでしたので、トレンドがかなり違う感じがしています。

梅田:なるほど、確かに2000年以降は、一つの使い方より、勝手に遊べる、勝手に広がることができるものが増えてきたように感じます。

研究にとどまらず、コピーライティングの賞に応募されていますよね。しかも、きちんと結果を出しているのがすごい(「宣伝会議賞」協賛企業賞を第53回と54回に連続受賞)。なぜ応募しようと思ったんですか?

梅田:普通は……

飯田:しないですか?

梅田:応募すると結果が出てしまうじゃないですか。日ごろ発言していることが実証されるかどうかが明らかになってしまうので、普通やらないと思うんですよ。
 自分が考えてきたものを形にして「ほら、獲ったでしょ」というところまでできるのは、他になにがしかの思いがあるのかなと思っていました。

飯田:いえ、学生の前で偉そうに話しているから、「じゃあ、先生はどうなんだ」といったところはありましたし、私自身、言語学の畑でずっとやってきて、広告の仕事をしたこともないので、立場的に弱かったんです。

 一度、大御所コピーライターの方にお会いした時、「大学の教員をしてるんだ。つまらない仕事をしてるんだね」と言われまして。確かにまあ、つまらないところもありますけれど(笑)。でもそれ以上に、コピーを1本も書けていない自分は、確かに大御所コピーライター氏から見たらつまらない人間だなと思いまして。それで「宣伝会議賞」にはチマチマ応募していたんです。2010年から。

梅田:なるほど。