近藤大介氏の著書『未来の中国年表』によると、2023年に中国が世界一の経済大国となり、中間層4億人が海外で爆消費をするという予測もあるほどです。つまり爆買いはまだ序章にすぎずこれから本格的な爆買いが始まるということです。シンガポールは中国からの買い物客もすでに上手に取り込んでいて、シンガポールの観光収入を見ると、観光収入の30%は「買い物」で稼ぎ、中国観光客が落とすお金の42%が「買い物」となっています(2017年第一四半期)。
私も中国人や中華系シンガポーリアンの友達と日本でもシンガポールでもよく買い物に行きますが、「ブランド物はロゴが命」という人達も多いことに驚きます。彼らの価値観としては、追加料金を支払ってでも有名ブランドの商品が買いたい、その中でもそのブランドだとハッキリと一目で分かるロゴがあるのがいい、ブランドが分かりにくい物にお金をかけるのは無駄だと思っている人もいます。
バッグや靴やベルトなどはロゴマークができるだけ大きく、一目でそのブランドだと分かる定番中の定番が人気です。デザイナーズブランドの大きなロゴ入りTシャツはブランドが非常に分かりやすいので大人気で売り切れになる程です。子供とお揃いで着るスタイルも人気があります。
富や成功の象徴としてのブランド物
デザインが好きといった理由の他にも、富や成功を象徴する記号として消費しているのです。ブランド物を身につけている人に対する尊敬の眼差しも大きく、「Aさんはこのブランドを身につけていて素晴らしい」と言ったセリフを会話の中で聞いたことも多々あります。本質ではなく、うわべを見て判断するのは「キアス」という気質のせいかもしれません。

「キアス」とは、元々は福建の言葉で、喪失への強い恐怖感といった意味です。シンガポールでは小学校の成績で将来が決まるなど過剰なエリート教育、あまりにも経済合理性や効率を優先させ過ぎる政策などから、過当競争によるダークサイトとして、喪失への強い恐怖感や周りを出し抜いてでも有利になりたいという心が発生するのではないかと推測されます。
中国も経済成長が著しいのですが、欧米社会ではアジア人の地位が低く見られることもあるために劣等感を抱えていることも多く、そんな中で自分の経済力を瞬時に相手に伝えることができるのがロゴのパワーなのです。
銀座に構えるインバウンド向けのデパートも中華系をターゲットにするならば、アンケートと引き換えにバウチャーや物(簡単なアンケートなら高価な必要はありません)を渡すなど、彼らが本当に欲しい物をリサーチする価値はあります。なぜなら、キアス気質が強くて「もらえるものはもらいたい」と考える中華系にプレゼントは大変有効だからです。

ファイナンシャル・プランナー
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP認定者。1978年、三重県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、外資系投資銀行に入社。退職後、FPとして独立。2015年から生活の拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』(講談社+α新書)、『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。「ホンマでっか!?TV」「有吉ゼミ」などテレビ出演や講演経験も多数。https://yokohanawa.com/
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