梅田:そうですね。この新しい意味をどう付けるか、世の中の文脈の中に商品をどう置くかということを常に考えています。

 ウェブムービーについて付け加えると、1週間に100万回再生させることもあれば、3年間で1000万に知らせるということも必要で、僕は後者の方が大事だと思っています。「世界は誰かの仕事でできている」もそうですし、「がんばるあなたがNo.1」もそうですけれど、複数年経過しているキャンペーンが合っていて。
 実は最近なかなかないんです。消費者に飽きられてしまうとか、生活者がもうちょっと違う刺激が欲しいとか。担当者さんが飽きてしまうこともあります(笑)。いろいろな中で新しいもの、新しいものをと求められるんですが、それよりももっと耐久性が高くて、ある時代に合った価値をずっと同じ言葉で定義し続けられるようなものを考え出すようにしています。

今の時代において普遍性があれば

飯田:ある意味、「普遍性がある」ということですね。

梅田:そうですね。普遍性にちょっとだけ言葉を添えると、「今の時代において普遍性があればな」ということです。この例えば10年っていう単位で考えるですとか。
 これもよく使う例なのですが、冷凍食品が生まれた時は保存食として考えられていたのですが、今は孤食だったり、忙しい家庭を支えたりといった、社会課題をも解決する商品に変わってきています。その文脈で、「今、こういう世の中で皆頑張っている中で、私たち冷凍食品メーカーが先に頑張っておきましたので、安心してくださいね」と言うと、本質的な価値は変わらなくても、文脈としてはまったく違うものになります。
 そういったポイントをいかに見つけて言語化するかというのが、コピーライティングの本質じゃないかと僕は思っています。

飯田:そうですね。その技術がやっぱり難しいし、当たり前のこと言ってもいけないし。目の前の商品のことだけでもいけないから、この先に発売される商品のことも射程に入っているような言葉を紡ぎ出す、すくい取るのも難しいことですよね。

梅田:僕はいつも、商品に真っ正面に向かい合うのではなくて、商品を持っている人のことを考えるんです。商品単体で考えると、商品の良さをそのままひもとこうとしてしまうのですが、そうするとだいたい独りよがりになる。

飯田:そうそう。お前にとっていいんだろうといった言葉になってしまって、私には全然関係ないよってなりますよね。

梅田:そうですね。ただ、商品が使われるシーンをいかに想定して、どういった人たちがその商品によって助かった、お金を払ってよかったと思ってもらえるかというのを計算しながら文脈を作るのが僕たちの仕事なので。皆コピーライターの人たちはなぜそうやって考えないんだろうって不思議に思いますけれどね。

 僕は、きちんと生活をするってことを心に決めています。きちんと生活をしているからこそわかる商品と生活者の距離感というものがあります。新商品が出た時に、「これすごいいいよ」って言われたところで買わない「肌感」みたいなものを、ちゃんと持つようにしているので。そこに忠実にしていくと、単体で考えるということは起こり得ないはずなんです。
 買って、自分の物になって初めて、役に立つというフェーズに入るわけじゃないですか。買ってもらうところは入り口でしかないので、入り口をゴールとして考えてしまうと間違いが起きますよね。

飯田:そうですね。その先まできちんと導線上で商品を考えるのは難しいですね。企業としては、買わせることがゴールであるかもしれない。

梅田:僕はいつも「言葉はタダだ」と思っています。じゃあタダでお願いしますってなるから、そういうことではないですけれど(笑)。
 言葉は、本当はタダなはずなんです。キャンペーンを作ったりとか、コンセプトを決めたりしていく中で、いちばん皆が合意しやすいものであるはずなんです。ですから、言葉で大きい文脈や、皆がそうだよねと思えるベクトルのようなものを作ることができれば、キャンペーンは勝手に回っていくはずです。僕はそこを自分の仕事としてやっていることが多いと思います。

次回に続く)