梅田:「文脈」って、僕がいつも気にして使っている言葉なんです。なぜかと言うと、一つひとつの商品には、絶対的に本質的な価値があります。でも、本質的な価値とは別に、今の世の中の文脈の中で置かれる価値っていうのが絶対にあって、それを設計するのがコピーライターの仕事のはずなんです。その文脈を構成できないコピーライターが多いから、強い言葉でかなぐり、気に入らせようということを考えてしまうのですけれど。
 本質的な価値をないがしろにせず、新しい文脈で今なりの輝かせ方を発見できれば、それがいちばん美しいはずなんです。つまり、文脈さえ発見できれば、簡単な言葉で表現できると思うんです。

簡単な言葉が難しい

飯田:それが難しいですよね。その文脈がピッタリと消費者の世界観や価値観と合致すれば、どんな簡単な言葉でも皆振り向いてくれますよね。ズレていれば、どんな力業であっても誰も振り向かないし。違うぞ、俺はそういう気持ちじゃないって、かえって嫌われてしまうこともあって難しいんですよね。

梅田:難しいと思います。今、ウェブでは「バズムービー」があります。あれは話題になればいい。もう100万回再生されましたといった(笑)。

飯田:あははは(笑)。

梅田:それって、文脈を発見することと真逆なんです。力業をやっているだけで。
 もちろん最大瞬間風速を吹かせるという意味では、新しい戦法なのかもしれませんが、それが伝わり過ぎること、100万回再生されることによって、その会社の負の遺産になってしまう可能性もあるはずなんです。そういったことを考えずに皆、バズムービーだ、バズムービーだとやるので、おかしいことになるんです。

飯田:企業も閲覧数ばかりこだわってしまって、話題性だけ作ればいいよみたいな感じもありますよね。

梅田:そうですね。ある期間にこの回数は絶対再生させましょうといった話になりますからね。「100万回YouTubeで再生する」とか。

飯田:「100万回再生されるものを作れ」といった注文が来るんですか?

梅田:はい。それも理由があって100万回と言っているわけではなくて、「そんな感じで」といったことはあります(笑)。

飯田:それで、ちゃんと依頼された通りに作るんですか?

梅田:まあ、目的を置き直すということも僕らの仕事には多くて。純粋に面白いCMや動画を作るのが得意な人もいまして、彼らは「100万回再生させてください」という依頼を受けると、「わかりました、100万回再生されるものを持ってきました」となるんですけれど。
 僕は「100万回再生された後に何が必要なんですかね」というところからあえて考え直してしまうので、ありがたいと思ってもらえる時もあれば、面倒くさいなコイツって思われる時もあります。新しい文脈がドロドロ出始めるので、「なんかコイツ、四の五の言い始めたな」ということになったり(笑)。

梅田さんの最近のお仕事って、単体の商品だけでなく、シリーズ全体や企業のブランディングが多いですよね。例えばジョージアだったら、「エメラルドマウンテンブレンド」だけでなく、ジョージアシリーズ全体のブランディングですとか。ブランドの価値全体を高めるとなると、バスムービーで一瞬にして100万回再生させるよりも、梅田さんの戦法のほうが浸透していくように感じます。

梅田:そうなんです。今、僕がやっている仕事だと他に、キリンビールさんの第3のビール(新ジャンル)「のどごし〈生〉」の「がんばるあなたがNo.1」という応援メッセージもまさに文脈なんですよね。
 なぜかと言うと、「のどごし〈生〉」って新ジャンルでいちばん売れている商品なので、「いちばん売れている商品です」「ナンバーワン商品です」でずっと売ってきていたんです。でもそうではないのではないかということを、僕が入らせていただいてから考えた。そして、「頑張っている人がいちばん偉くて、彼らにいちばん選ばれている商品という誇りを持って、また商品を作り出せます」ということをテーマにしましょうということに行き着いたんです。
 ですので「No.1」という言葉は変わらないのですが、その意味合いが、今まで「自分たちの商品が売れている」というNo.1だったものから、「生活者に対してのリスペクト」のNo.1に変わっていきました。

飯田:まさに「新しい意味」ですね。

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