梅田さん、「新しい」と思われたのはどんなあたりですか?

梅田:コピーに使われる言葉は、文中に入ることで、通常の言葉よりも意味が広がるはずなんです。ですから、その意味の広げ方をきちんと設計しているかどうかというのが大事になってきます。

 例えば、僕の本のタイトル『「言葉にできる」は武器になる。』はかなり激しい言葉遣いをしていますが、実はそういう強い言葉を持ってくるよりも、普段から使っているけれど、文中に入ることで意味が広がったり、新しい意味付けみたいなものができたりするものこそが、本当は人の心の中にスッと入ってくるものだと僕は思っています。

 推薦文に使った「新しい意味」というのは、コピーを考える時に僕がいつも気にしながらやっている「意味を広げる」ということの意味合いで使いました。
 ただ、「意味が広がる」というと玄人にはわかると思うんですが、これから本を読んでみようかなと思う人にはちょっと難しい感じがしました。そこで「広げる」ということを「新しい」という言葉に変換しました。

飯田:この本は、コピーライターの方は第一の読者にしてないんです。もうコピーライターの方はご存じじゃないですか。講座などで散々習っているし、何千本とコピーを書いて痛い思いもしていますから。そのわかった人たちに対して釈迦に説法するような本は要らないのではないかと思ったんです。

 ただ、コピーをたくさん調べていると被っていたり似ていたりするものが多くて、「またこの言葉か」と消費者としてちょっと飽きてしまっているところがあります。
 そういった時、これを提案したコピーライターよりも、選んでいる企業に問題があるのではないかと思うようになりました。他の企業が使っていない言葉や、他の企業の裏を行くような表現を見つけだせていない。「選ぶ側の責任」というのを証明したいと。

梅田:なるほど。

飯田:クリエイターが「これはウケがいい」「何百人の人が支持した」と提案したとしても、「他の会社も使っているじゃないか」と疑問を呈することはできると思うのです。その表現が自分の会社が本当に言いたいことなのか、しっかり検討すべきです。ただ単に響きがよく、消費者に万人ウケしそうなだけで、メッセージ性が低いかもしれません。
 選ぶ側にもう少し鋭い目を持ってほしい。企業でクリエイターからプレゼンを受ける側の人にぜひ役立ててほしいという動機がいちばん強かったんです。

強さより、ふさわしさを

梅田:プレゼンの場合、必ず、コピーを考えてプレゼンをする側と、される側があります。この2つの変数でしか変わっていきませんからね。

 飯田さんのお話を伺う前から、僕はコピーを書く側も考えるべきだと思っていました。僕の本にも書きましたが、コピーライターの仕事は、強い言葉や今まで使われてない言葉を見つけてくることではない。そうではなくて、今まで普通に使ってきたけれど、ある企業がある目線で話をすることで、意味がまったく変わったり、意味が広がっていったりする。そういったことをいかに設計するかが大事だと思ったんです。

 僕は常にそう思いながら仕事をしています。大鉈を振るうように何か強い言葉を持ってくれば満足するということではありません。時にはブランドに寄り添うことが大切になることもあります。企業が仮に100年続いているのであれば、100年続いてきたことにふさわしい言葉選びは、絶対にクリエイターが考えなければいけないことです。

 飯田さんの本は、意味を広げることの新しいきっかけになるのではないかと思って、このようなコピーを書かせていただきました。

飯田:ありがとうございます。
 例えば、よく見かけるコピーに「夢を形に」とか「何々を力に」とかありますよね。割とよさそうですけど、意味はボンヤリしています。それこそ「解像度が低い」感じがして、忘れられちゃうんですよね。

梅田:ありますよね、一見よさそうですけれど。

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