[常識1]配当と自社株買いの共通点と根本的な違い

 株主還元、つまり株主への儲けの分配にはいくつかの方法、またいくつかの考え方がある。

 このうち配当は、原則としてすべての株主に所有している株式数に応じて平等に儲けを分配していくものである。

 一方で、自社株買いは、まさに言葉の通り、原則として過去から積み上げてきた儲けをベースに企業がその企業自身の株を買うことである。企業が自社の株式を購入すると、株主の中で株式を売った人に株式の購入代金が支払われる。

 つまり、配当の場合はすべての株主に対して通常平等にキャッシュが分配されるのに対して、自社株買いでは、株を売った人にしかキャッシュは分配されない。このように、配当と自社株買いの間には、株主全員に平等にキャッシュが分配されるのか、一部の株主にだけキャッシュが分配されるのか、という違いがある。

 ただ、株主グループをひとまとまりで考えると、企業から株主グループにキャッシュ(儲け)を分配する手段としては同じものである。したがって、企業が儲けを株主に分配する手段、つまり株主への儲けの還元手段として、配当と自社株買いの2つが位置づけられているのである。

バフェットはなぜ配当が嫌いなのか?

 ここで、投資家サイドから、株主還元について考えてみよう。

 一般に、定期的にキャッシュを受け取りたい個人投資家は配当を望むのに対して、プロの投資家や長期投資を考えている投資家などは、自社株買いを望むようだ。これは、配当の場合は、配当を受け取るたびに一定金額の税金を支払い、また一部投資額を換金してしまうことになるのに対して、自社株買いの場合は、株式を売らなければ株式の価値は高くなっても税金を支払う必要がなく、儲けを換金せずに再投資したことになるので、将来的により多くの儲けにつながる可能性があるからである。

 さらに、将来的に株式を売却してその売却益に対する税金を支払うとしても、かなり将来に支払うものであれば、金利やリスクを考えるとかなり割り引いて考えることができるからである。

 実際に、世界的に有名な投資家であるバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏は、株主還元としては、配当よりも自社株買いが望ましい、と述べており、実際にバークシャー・ハサウェイ社自体も1967年以降現金配当は一度もしていない。

 ただこの点については、配当は、株価を維持するために、継続しなければならないというプレッシャーを経営者に与えるが、自社株買いは機動的に行うものであり、経営者に対して継続しなければならないというプレッシャーを与えないため、経営者に対する規律という意味では配当の比重を高める方がいい、という見方もあるようだ。

 なお、配当や自社株買いは、株価に影響を与える。次に株主還元と株価との関係について考えてみよう。

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