経営と会計のつながりを解説した『ビジネススクールで教えている会計思考77の常識』の番外編として、株主還元に関連する「7つの常識」を解説する。

<著者プロフィル>
西山 茂(にしやま・しげる)
早稲田大学ビジネススクール教授。早稲田大学政治経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA修了。監査法人トーマツなどを経て現職。学術博士(早稲田大学)。公認会計士。主な著書に、『企業分析シナリオ第2版』『入門ビジネス・ファイナンス』(以上、東洋経済新報社)、『戦略管理会計改訂2版』(ダイヤモンド社)、『出世したけりゃ会計・財務は一緒に学べ』(光文社新書)、『増補改訂版英文会計の基礎知識』(ジャパンタイムズ)、『ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門』(共著、日経BP社)などがある。

6月19日、メルカリが東証マザーズに上場(写真:ロイター/アフロ)

アマゾンは無配継続、マイクロソフトは基本的に連続増配

 6月19日、日本のユニコーン企業として注目を集めるメルカリの株式が東証マザーズに上場された。初値は公開価格よりも60%以上高い5000円となり、投資家の期待の大きさを見せつけた。

 メルカリのように急成長を続けている企業は、上場後も配当を実施しないことが多い。一般に成長期にある企業は、先行投資のためにかなりの資金が必要になるため、無配当、あるいは配当をする場合でも少なめにすることが多い。2年前の2016年に上場したLINEもまだ配当はしていない。

 アマゾンは、設立以来2017年12期まで無配当を継続し、買収や設備投資に資金を投入しているが、これはアマゾンがまだ成長期にあることを意味していると考えられる。

 配当するか否かというのは、企業の成長意欲の強さを示しているとも言える。

 マイクロソフトが2003年6月期に配当を開始したとき、一部の投資家が「マイクロソフトも魅力がなくなった」とコメントした。これは、配当を始めるということは、事業から生み出している巨額の儲けに比較して投資がそれほど必要なく、資金に余裕が出てきていることを意味しており、儲け以上に投資をするような成長期は終わったことのサインと受け止めたということだったようだ。

 安定期にある企業は、儲けに比較して巨額の投資を行うことは少ない。したがって、資金に余裕もできるため、ある程度配当を行う場合が多い。実際に、配当を開始して以降のマイクロソフトは、保有している多額のキャッシュを株主に還元するために前年の約10倍の配当をした2005年6月期の翌年と、配当を据え置いた2010年6月期の2年を除き、14年にわたり増配を継続しており、成長企業ではなくなったかもしれないが、安定期に入った優良企業としての地位は継続している。

経営と会計のつながりを理解する

 では、メルカリやLINEはいつまで配当をしないのだろうか。その問いについての答えを探る手がかりとして、ここでは配当などの株主還元について考えてみたい。

 筆者は今年6月、『ビジネススクールで教えている会計思考77の常識』を上梓した。同書は、経営と会計のつながりを理解するポイントを解説したものである。会計思考を深めていく題材として「ビジネスの定石」を取り上げ、その死角や注意点も含めて、基本から解説した。「ROE の向上」「レバレッジの使い方」「リスクの抑制」「成長の持続」「良いものをより安く」「キャッシュフローの重視」など10章からなる。

 その中では、配当や自社株買いなど株主還元は取り上げていなかったので、ここでは同書の番外編として、株主還元に関連する「7つの常識」を解説しよう。