【2016年6月3日】:相も変わらぬ低評価

 翌年の6月に再びベントンビルを訪ねると、本社の周辺にはオンラインで注文した商品をピックアップするための専用拠点が増えていた。ガソリンスタンドのような見た目で、入り口の端末で番号を入力して指定されたスポットに車を止めると、スタッフが商品をトランクに積み込むというサービスだ。「なかなか便利だよ」。利用者の一人は当時、そう語っていた。

 また、店内や駐車場でのピックアップが可能な店舗が拡大する一方、宅配ボックスを備える店も増加した。うまくいかなかったが、米ライドシェア大手のウーバーやリフトと提携、ドライバーが荷物を運ぶという実験を始めたのもこの頃だ。

 レジではモバイル決済システムの「ウォルマート・ペイ」を全店で展開し始めた。クレジットカードをスマートフォンのアプリに登録しておくと、専用レジ端末に表示されるQRコードをスキャンするだけで精算が完了するという仕組みだ。傘下の会員制スーパー「サムズ・クラブ」はレジの簡素化をさらに進めており、アプリで商品のバーコードをスキャンするだけでレジを通る必要さえなくした。

ウォルマートが建設を進めている商品のピックアップ拠点。ネットで注文した商品をトランクに積み込んでくれる
ウォルマートが建設を進めている商品のピックアップ拠点。ネットで注文した商品をトランクに積み込んでくれる
レジの待ち時間を短縮させるウォルマート・ペイ。
レジの待ち時間を短縮させるウォルマート・ペイ。

 このように、マクミロンCEOが率いる経営チームはオムニチャネルの実現に向けて様々な取り組みを進めていた。それでも、市場にはアマゾンの攻勢にさらされる「オールドエコノミーの巨人」という見方が根強く残っていた。

 その一因はウェブサイトやモバイル機能の使い勝手もさることながら、オンラインの品揃えにあった。「商品のチョイスが圧倒的に少ない」とアナリストが口を揃えたように、「エブリシングストア」を標榜するアマゾンに比べて、ウォルマート・ドット・コムの品揃えが貧弱だったのは間違いない。

 その風向きが変わったのは、ウォルマートがネット通販ベンチャー、ジェット・ドット・コムを買収した2016年8月のことだ。33億ドルの買収価格は高すぎるという声も上がったが、eコマースのプロフェッショナルとして名高いジェットCEOのマーク・ローリィ氏を手に入れたことで、ウォルマートのeコマースは成長軌道に乗り始める。