インフラ点検や測量用など法人向けのドローンサービスが増えてきた。高速かつ安定飛行が可能な専用ドローンを使い画像解析サービスなどを一元提供する。今後は農業や監視など、多様な用途へ法人向けサービスが拡大しそうだ。

「なぜ自動車部品メーカーがドローンを開発しているのか」──。2016年3月、ドローン業界を騒然とさせるニュースが流れた。自動車部品大手のデンソーが水面下で、ドローンの開発を進めていると報じられたのだ。従来のドローン開発はベンチャー企業が中心。大手の参入は極めて珍しい。
デンソーは4月8日、法人向けサービス用ドローンを開発していることを公表。インフラ点検などのサービスを組み合わせて提供する計画も明らかにした。その際に使うのが、「UAV HDC 01」という開発コード名のドローンだ。ホビー用ヘリコプターなどを手掛けるヒロボー(広島県府中市)と共同開発している。
狙いは新規事業の開拓。2012年から、道路や橋などの点検に適した高機能ドローンの開発に着手したという。
デンソーが開発中のドローンは、自動車部品の製造で培った機体制御や通信などの技術を応用している点が特徴。高解像度のカメラを搭載し、人間が目視で確認するのが難しい、老朽化した橋梁や山間部の道路の点検、ひびの発見などに役立てる。建設関連のコンサルティング会社などと組み、1~2年内のサービス開始を目指す。
デンソーは、クルマのブレーキや車体制御などの部品開発に強みを持ち、センサーなどで障害物や車間距離を把握し安全性を高めるシステムの開発で、先進的なノウハウを持つ。そうした優位性を今回のドローン開発に生かした代表例が、「D-CORE」と呼ぶ、独自のモーター制御技術だ。
ドローンが搭載した4個のローター(回転翼)の羽根の角度を変えられる可変ピッチ機構などにより、安定した姿勢での飛行を可能にする。従来のドローンでは、飛行中に強い風で煽られ姿勢が傾いた場合、元に戻るまで10秒から数十秒かかっていたという。だが、デンソーのドローンは、傾き具合に合わせてD-COREがそれぞれの翼の動きを調整することで、数秒以内に元の姿勢に戻れる。
また、翼の角度が一定の固定ピッチだと働くのは上昇力だけだが、「HDC 01」はピッチの制御で下降力も生み出せる。従来製品に比べると、上昇・下降のスピードは数倍になり、そのため、橋などの構造物に素早く近づいて撮影しやすい。操作性が高いため、撮影対象物に約60cmまで近接しての撮影も可能だという。
●法人向けサービス用ドローンの特徴
特徴1▶▶▶ 安定飛行
雨や風などの悪天候でも飛行姿勢を維持する機能を搭載

特徴2▶▶▶ 上昇・下降のスピード
障害物の回避や作業の効率化のため素早い上昇・下降が可能

特徴3▶▶▶ 高速飛行
一般消費者向けのドローンに比べ、飛行速度が速い機種も

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