約束通りル・マンでの再開を果たしたポルシェ博士と豊田章男社長

豊田:モータースポーツを軸にクルマ作りをしている会社はトップの姿勢も大切かもしれませんが、やはり現場を支えている支柱的な存在の人もいるんだと、そうした方をご紹介頂けたことを大変嬉しく思いましたし、そういったことも含めてモータースポーツを盛り上げていかなければいけないなと感じましたね。

 昨年アウディが撤退して今年はトップカテゴリーにはトヨタとポルシェしかいません。レギュレーションとしてもトップカテゴリーであるLMP-1H(ハイブリッド車)は、技術も開発コストもかなりのレベルにあるため、新規参入が難しいとも言われますが、そのことについてはどうお感じになられますか

豊田:要はね、トヨタ1社じゃ何もできないということです。次世代社会も含めてEVもFCVも、それだってトヨタ1社じゃできません。いろんなものを巻き込んで。単にモータースポーツが好きということだけじゃなくて、一緒にモビリティーの未来を考えていきたい、それに尽きると思うんです。

 そのためにもやはり、競争はあったほうがいいじゃないですか。単なる技術競争も大事ですが、でも、参加者がいるという状態も大事だと思います。ただ、レースという以上、参加者を増やすために技術レベルを据え置きにするというのは少し本末転倒じゃないかとは思います。そのバランスは非常に難しいとは思いますが。

 トヨタとしてル・マンに参戦することの意義についてはどのように考えていますか。

豊田:我々はニュル(ブルクリンク)の24時間レースにも参戦しています。そして初めてル・マンに来て、同じ24時間レースでもこうも違うのかと。ニュルでは市販車ベースのクルマを24時間戦わせます。24時間のなかで、ここはガチンコでいくぞ、ここは落とすぞとかペース配分というものがあるんですね。ここはね、全周アタックなんですよね。可夢偉がコースレコードを出しましたけど、それくらいのペースで24時間走り続ける訳ですから、全く種類の違う24時間レースだなとまず思いましたね。

皆さん、私を単なるレース好きと思っているでしょう(笑)

豊田:それともう一つはハイブリットに関してですね。内山田さん(内山田竹志氏、初代プリウスの開発責任者、現会長)が作ったプリウスをはじめ、ハイブリッドというものの研究室なんですよ。ハイブリッドというと燃費、エコというイメージで語られがちですが、このル・マンのような場で、毎周毎周ガチンコでアタックするような走りができるという意味では、やっぱりヨーロッパにおいて、ハイブリッドというもの見え方が、ガラッと変わってくると思うんです。

 トヨタの場合は、ハイブリッド、PHV、EV、FCVといろんな次世代環境車があるなかで、当面の一番現実的な解はハイブリッドだと思っています。しかし、ハイブリッドの割合は全世界レベルでみてもまだ2%くらいしかない。現実的な解だとすれば、10%くらいはハイブリッドになっていくことを期待していますし、トヨタとしては有利に展開していけるんじゃないかと思いますけど。

 章男社長はいつも「レースの目的は、クルマ作りと人材育成」とおっしゃいますけれど…

豊田:それとファン作りですね、これが大事です。ドライバー“モリゾウ”(レース競技に参加する際などの章男社長のニックネーム)としてこういった活動をしていることを、ひとりでも多くのファンの方、はもちろん、社員も何かを感じとって欲しいなと思いますね。

 日本の自動車メーカーがレース活動を続けていくことの難しさはありませんか。

豊田:結構大変なんですよ。これだけの大企業がレースをやるのって。だって、世の中の人、みんな私が単なるレースを好きだと思っているでしょう、公私混同みたいな(笑)。