寝ても覚めても都政を考えるのが都知事であるはず

門田:都民の生命、財産、幸福追求の権利を守っていくのが都知事のリーダーとしての本義なのに、その本義が、舛添さんには、そもそもなかったんじゃないでしょうか。だから、毎週金曜日の午後2時を過ぎたら、湯河原へ公用車で向かって……。

櫻井:その途中の世田谷で、ご家族を拾って(笑)

門田:そう、家族を拾っていくみたいな(笑)。もう、そういう姿を見ていると『もともと何のためにこの地位についたのかという本義のない人は、都知事とか、そういうリーダーの地位にはついてほしくないな』って、強く思いましたよ。

櫻井:門田さんが上梓された本のタイトル『リーダーの本義』にもある「本義」を、別の視点から考えるなら「公私」の問題ではないかと思うんです。この「公私」のバランスにおいて、「無私」の気持ちに近いところに立つことが「リーダーの本義」ではないかと。

門田:そうだと思います。

櫻井:もちろん、リーダーにも、いろんな趣味や思いがあっていいんだけれど、やっぱり都知事である限りは「都民のために私のすべてを都政に注入します」という姿勢であってほしい。

門田:ええ。

櫻井:少子高齢化社会の最先端を行く東京都で、幼稚園児を安心して預けられる施設や、お年寄りが幸せに暮らせる場所が足りないという問題をどう解決するのか。21世紀の日本は、世界の最先端を行っています。その日本の中の最先端を行っているのが東京都です。都は最先端を行っているだけに、成熟した文明社会の抱える問題の多くも抱えています。少子高齢化の問題も、その1つです。

門田:その通り。

櫻井:たまたま東京都はお金があるんだから、東京都のリーダーである都知事は、都民をどういうふうに幸せにできるか、どんなふうに万人のために合理的な政策ができるかって、都民と都政のことを寝ても覚めても考えなきゃいけない。都知事というのは、24時間、ほとんどすべての時間、自分の意識を「公」のために集中させなきゃいけないポジションでしょ?

門田:そうですね。

櫻井:でも、舛添さんの中にはその認識がなかった。新宿区の市ヶ谷商業跡地のことにしても、今、門田さんがおっしゃったように、足元で都民がすごく困っている状況があるとき、都民の幸せを考えたら、定員割れしている学校をもう1つつくるなんて発想は生まれてこないはずです。

門田:ないですよね。

櫻井:それと、舛添さんは「自分の政治の原点は福祉だ」って、おっしゃっていたでしょ? でも、舛添さんは都知事になってから、お年寄りの施設に一度も視察に行っていない。

門田:すごいですよね。

櫻井:美術館には行っているのに……。確かに、美術館巡りは都知事としての教養として大事だし、美術品の購入もおみやげに必要なのかもしれないけれど、美術館に行く頻度と、福祉施設に行く頻度の差をみると、これはもう、都民はわかりますよ。そういうふうにみると、舛添さんの心の中には、リーダーとしての本義としての「公」の心がないと思うんです。

門田:私もそう思いますね。

櫻井:都知事になって、有頂天になってしまったんじゃないかしら。都はすごくお金がある。歳入は都税だけで5兆円規模。一般会計に加え、特別会計や公営企業会計を含めると約14兆円もの予算を司る行政機構のトップに立つわけですから「なんでもできる」と錯覚して、自分の果たすべきこと、いわゆる「本義」を忘れた……いえ、忘れたんじゃなくて、最初から、なかったのかもしれない。

門田:なかったんでしょうね。

櫻井:そういうふうに思うと、猪瀬直樹さんもそうですけど、東京都は本当につまらない指導者を2人続けて選んでしまった。そのことでは、私たち有権者の見識も問われます。