OB武田:私らの頃は、潜るための『ニセ学生マニュアル』というガイド本があったんですよ。在野の思想家の浅羽通明さんが、シリーズを何冊か出していました。

学生大江:それ、ほしいですね。ガイド本(笑)。

学生西岡:ほしい。どこの大学でどんな授業をやっているのか、ネットでもわからないものね。

オバタ:今日の学生さんたちは変わり者だな(笑)。

学生西岡:僕はそういうノリでSFCに通っていますからね。大学の授業に出て、何かを得たいっていう気持ちがあるので。もちろん、今も授業出ないで何かを得るっていう人はいます。でも、授業出ないで何もしてない人もいます。

オバタ:その最後のケースは昔からいる。ていうか、いっぱいいました(笑)。

慶應つながりのお得具合

OB武田:話題が少し変わりますが、みなさんの現時点で、社会人になった先輩と交流はありますか?

学生江波戸:実はここに来る前に、ゼミの社会人の先輩が、自分の会社の説明会を開いてくれて参加していました。僕は体育会系なので、交流の機会が多いですね。それは、福沢諭吉の「社中協力」という言葉で表せるんだろうなと思いますけど。

オバタ:縦がつながりやすいっていうのは、いい環境だと思うんだけどな。

学生江波戸:はい。それはそうです。でも、悪く言えば、何も考えなくても大企業に入れるということなので。その点には問題意識を持っています。

OB武田:既存の大企業はそういうつながりがあるとしても、ベンチャーはどうなんだろう?

学生大江:そうですね……。SFC自体、日吉・三田に比べたら、あんまり先輩とのつながりがないので。

オバタ:地理的問題もあるよね。

学生大江:まあ、そうですね。あと、SFCでベンチャーを起ち上げた先輩に話を聞くと、「そこに入ろう」ではなくて、「じゃあ、自分で起ち上げよう」になるんです。

オバタ:SFCつながりを嫌うSFC出身の起業家たちは多い気がしますね。大学名でつながるのなんて、大した関係じゃないだろう。そのレベルで考えてたら何もできないよね、っていう発想をしている。日本で一人しかできないことをやらないと成功しない世界なんで、その考え方は正しいんでしょう。

 慶應つながりといえば「三田会」が連想されますが、武田さん、社会人としてその動きをどのようにご覧になっていますか。

OB武田:弊社の三田会については全然知らないんですけど、なんとなく先輩と後輩がすーっと寄り集まって関係が生まれる、みたいな流れがありますよね。気持ち悪いという説もあるし、ありがたいという説もある。

 とある県庁に出向いたら、副県知事経験者、部長級若干名、局長十何人という数十人規模の三田会がありました。その県の地元新聞社は、慶應閥バリバリ。個別の企業や業界において、三田会が圧倒的に強いところは、現にありますよ。

オバタ:日本最強のネットワーク、「三田会マフィア」なんて言い方をする人もいますが、その存在によって人事考課が変わるといった話までは聞きません。集まって情報交換はしているんでしょうけど、それを言ったら、東大卒の人たちのほうが遥かに高度な情報交換を盛んにしているのでは。

OB武田:その力は歳を重ねるほど見えてくるものだと思うんです。20代で社会に出たときはあんまり関係ないんだけど、40歳とか50歳になると同級生たちがそれぞれの業界内の然るべき地位にステップアップしている。すると、お互いの持っているメリットを交換するという流れが生まれるんですね。

 みなさんの親御さん世代で「得している」っていう、慶應卒業生の話を聞いたことはありますか?

(学生3人とも首を横に振る)

親の経済的負担は意識している?

オバタ:3人とも、一般的なご家庭で育っているんですよ。だから、あんまりそういう話は耳に入って来ないかも。

OB武田:今日の学生さんたちは全員内部生だと事前に聞いていて、「内部生といえば、サラリーマンの中でもアッパークラス。それが代々続いている家の子なのかな」って先入観があったんです。でも、そうとも限らない。もっと、幅が広いんだなあ。

学生江波戸:内部生にもいろいろいるってことですよね。世間が思っているような人も確かにいますし。僕の代でいうと、塾高から医学部に行った3分の1くらいは幼稚舎出身だったので。そういうものすごく勉強している子もいます。

オバタ:同じ内部生でも幼稚舎からの場合、親御さんの経済的負担が相当大変だったと思うんだけど、その辺はどう見えていますか? 

学生大江:僕は、小学校のときからそれを意識していて。

オバタ:おお、すごい、小学生で?

学生大江:はい。幼稚舎時代、学校の友達の家に遊びに行って、「ああ、何かちょっと違うな」っていう雰囲気は感じていました。学費も高いし、親に負担をかけているなと、一番意識したのは大学進学のときです。元々、僕は薬学部の志望で、初年度納付金を調べてみたら、240万くらいだった。それを見たときに、「あっ、これ厳しいのかな……」って思った。

 それで、結局、SFCに行きました。SFCの学費も安くはないんで、最初は奨学金を取って行こうかなと考えていました。年収などの条件でダメだったんですけどね。僕には妹もいるので、自由にバンバンお金出せる状況じゃない。他の幼稚舎生が感じないことは、強く感じてきたと思います。小、中、高、大学と。

オバタ:まだ、19歳だよね? そこまで親の懐のことに気をまわしてきたんだ。親世代の一人として泣きそう……。

OB武田:すごい! 私も感心してます。

学生江波戸:僕は彼ほど立派じゃないですけど(笑)。一般論でいえば、大江のような学生が増えてきたってことだと思います。少子化の影響もあると思いますけど、昔でいえば多分考えられなかったことですよね。だからこそ、僕は「慶應ボーイ」というイメージが悪くなってきたのかなと思いますね。

オバタ:これまた、上手なまとめを。本日は「慶應ボーイ」らしからぬ熱い語りを、ありがとうございました!

(早稲田編へ続きます)