今の学生には死語になったあの必須単語

OB武田:その一方で、今の学生たちは真面目に講義に出るとも聞きます。

学生江波戸:それも『早稲田と慶應の研究』を読んでものすごく驚きました。昔は、授業に行かなかったんですか? 僕らの問題意識としては、「今の大学生は勉強しない」なんですよ。だから、今の大学生は授業に出ているという見方に驚くんです。

オバタ:勉強をする/しないの評価基準が違うんですね。

学生江波戸:今よりも授業に出ていないっていうのが、どういう状況なのかよくわからないです。この本では疑問を解消してくれていて、今の学生が授業に出ているのは、勉強熱心だからではなく、単純に「出席がとられるから」とありますよね。昔は出席とられなかったから、今よりもっと出てなかったってことなんですか?

OB武田:今も「代返」という言葉って、ありますか?

学生一同:……。(西岡さんのみが「知ってる」という顔)

OB武田:えええー。

オバタ:文科省の方針で出欠が厳しくなったから死語化しているんですよ。「代返」とは、友達の代理で返事をすること。名前を呼ばれて出席をとるとき、声色を変えて返事する。出席カードも何枚か用意して、代わりに出してやるとか。これ、昔は非常に一般的。ごく一部の真面目な子以外は、全員やっていました。

学生大江:その発想はなくもないですけど、その言葉に馴染みはないです。

オバタ:それは、すごく代返がしづらくなったからですよ。

学生西岡:出席カードも、1人ひとりに配っているので。

オバタ:そうそう。配ったカードには折り目付けるとか、欠席学生ぶんが混じらないように工夫してね。

OB武田:そうなんだぁ……。じゃあ、もう、「レポート一発で単位認定」みたいな授業はないの?

学生大江:あります。でも、出席はとられます。

オバタ:3分の1以上、欠席しちゃうと単位をもらえないことも多いよね。それは早稲田も一緒で、だから授業に出ないと普通に卒業できない。

OB武田:なんだろう。私の場合、勉強しなかったわけじゃないんですけど、講義に出ることが勉強じゃないと思ってたんですよ。基本、全部、自習です。しかも、自分の選んだ専攻とは関係なく、自分がやるべき勉強だと思えばやる。

 極端な例でいうと、磯田道史さんという『武士の家計簿』などの著作のある歴史学者。岡山の高校から京都府立大学にちょっとだけ在籍して、慶應の文学に入った。そして、慶應の図書館の本を見て、「すげー! 右から左まで、全部読んでやる」と思ったそうなんです。で、読書漬け生活の一カ月か二カ月で倒れ、救急車で運ばれました(笑)。

 というような、「単位は取るけど、授業なんて関係ないや。自分でバリバリ本を読もう」という考え方は、私よりもっと世代上の人はより強く持っていたと思う。

オバタ:30年前に大学を卒業した私世代だと、少数派だけれど、たしかにそういう学生はいた。自分もそれを目指していました。講義に出るのは週2つくらいで、ただし、出たからには本気で聴いていた。あとは、自分に必要だと思う本を片端から読む。それが勉強だと考えていました。

OB武田:今の学生さんは、他の大学に潜りに行く、っていう概念あります?

学生西岡:僕はやっていないですけど、友達にやっている人はいます。珍しいですけどね。

オバタ:まだニセ学生の生き残りがいたか!

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