セブンアプリは顧客にとって魅力があるか

 この収益モデルの違いは、ネット事業のあり方にも反映します。

 たとえば、セブンーイレブン・ジャパンは、スマートフォン向けの会員制アプリ「セブンーイレブンアプリ」の運用を2018年6月から開始しました。店舗での、購入した商品に応じて「バッジ」を付与されます。商品の購入数に応じて、バッジの色が「銅」「銀」「金」「プラチナ」と変わるようにして、繰り返し商品の購入を促す仕組みにしてあります。このほかアプリを起動するとたまるバッジも用意し、利用状況に応じてクーポンを配信されます。

 購入に応じた特典を付与するほか、実店舗での購買行動を把握し、顧客ごとに好みに合わせた商品情報を提案することで来店頻度を高める。グループのスーパーや百貨店との相互送客にも活用する。

 ただ、このアプリの本質はリアル店舗をベースに発想していることです。「もっとお店に来て、お店にある商品を買ってください」と促す。要は、リアルにネットをプラスする足し算から抜け出ていない、つまり、デジタルシフトの一歩手前にとどまっているように、私には思えます。

 それは、最大の店舗網であるセブンーイレブンはフランチャイズチェーンであり、個々の店舗はオーナーの経営であるという業態の一つの宿命なのかもしれません。

 しかし、顧客の立場で考えたとき、リアルにネットをプラスし、足し算で「客単価×客数」を高めようする収益モデルと、ネットとリアルのかけ算で「ライフタイムバリュー×アクティブユーザー数」を重視する収益モデルのどちらに魅力を感じるかといえば、後者になるでしょう。

 セブン&アイグループと並ぶ、もう一つの流通の雄、イオンでも2018年2月、大きな動きがありました。ソフトバンク、ヤフーとともにネット通販事業で提携する方針を固めたのです。

 具体的には、食品や衣料品、日用品などを扱う独自のネット通販を始める。3社が提携することで品揃えや顧客情報を共有し、ネット通販で先行するアマゾンジャパンに対抗するのが目的です。

 新たなネット通販では、ソフトバンクやヤフーがもつネットの市場分析技術、イオンの物流網などそれぞれの強みを持ち寄り、イオンの店舗運営でも協力する。人手不足に対応するため売り場にソフトバンクグループが開発したロボットを導入するなど先端技術の活用も検討されています。

 この提携を成功させるためには、ネットに精通したソフトバンク、もしくは、ヤフー側から、リアルのよさをよく理解し、なおかつ、強力なリーダーシップを発揮できるリーダーが就任し、プロジェクトを引っ張っていくことが必要でしょう。もし、それが実現すれば、ネットとリアルをどのように融合していくか、注目すべき存在になるはずです。 成否のポイントは、いかにしてリアル店舗をベースにした発想から抜け出せるかです。

アマゾン・エフェクト(効果)。アマゾン・ドット・コムの快進撃の陰で、業績や株価の低迷にあえぐアメリカ企業が増えている現象をさす。業界は百貨店やスーパーに限らず、生鮮品や衣料品、コンテンツ産業など幅広い業態におよぶ。オムニチャネルを知悉した著者がデジタルシフト危機への対処法を解説する。

2018年4月 プレジデント社刊