山本一郎(以下、山本):「連合」では「働くことを軸とする安心社会」を目指して政策提言などをされています。現在、新卒で入社したら定年まで一つの会社で働く終身雇用制が崩れ、雇用の流動化が進んでいますよね。そんななか、非正規労働者の問題は現代社会の中で存在感を増しているのではないでしょうか。
神津里季生(以下、神津):そうですね。現在、雇用労働者の4割は非正規労働者で、さらにそのかなりの部分が年収200万円以下の、いわゆる「ワーキングプア」となっています。非正規労働者の多くは、社会保険や健康保険などのセーフティネットからこぼれ落ちているのも問題です。連合ではこの問題に対応するため、「非正規労働センター」を立ち上げました。

山本:「労働組合」というと正社員の労働条件を改善するためのもの、という印象がありました。でも、連合は労働者全体の代表として、非正規労働者の労働条件の改善などにも積極的に取り組んでいるんですよね。このあたり、時代に合わせて仕組みを変えたり、うまくカバーできるものなのでしょうか。
神津:はい。しかし「非正規労働センター」をつくりつつも、私自身としては、この「非正規」という言い方自体を変えていくべきではないかと思っているんですよ。「非正規」というのはつまり、「正規に非ず」ということですよね。どんな理由であれ、そこで働いている方々を「正規ではない」と呼ぶのは失礼ではないかと思うんです。また、「非正規」と一口に言っても、そのなかにはさまざまなパターンがあります。
それぞれに対策を講じていくことが必要
山本:臨時社員、派遣社員、契約社員、パートタイマー……あと、嘱託社員などもですね。本当にたくさんの雇用形態があります。また、請負の一部には、実際には雇用のような形態であるにもかかわらず、きちんとした保護のない状態になっている場合さえもあります。「労働者」といっても、支払い方に一騎当千な報酬を得る類のプログラマーのような知識労働者もいますし、最低賃金の引き上げを心待ちにしているような労働集約的なサービス業に従事しておられる方もいる。一緒くたに「働くこと」を考えて労働組合がカバーしようとしても、なかなかむつかしいのではないでしょうか。
神津:それらを一括りで呼ぶことには無理があるのではないかと。雇用形態によって問題も違ってきますし、それぞれに対策を講じていくことが必要です。
山本:まったく同意見です。これまでも社会変化によって労働環境が変わってきましたが、連合では今後どんな社会が到来するとお考えですか?

1973年、東京生まれ、1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。東京大学と慶應義塾大学で設立された「政策シンクネット」では高齢社会対策プロジェクト「首都圏2030」の研究マネジメントも行う。
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