小松精練は、インクジェット捺染で繊細な質感を表現する(左)。同社の池田哲夫社長(右)(写真=右:江田 健一)
小松精練は、インクジェット捺染で繊細な質感を表現する(左)。同社の池田哲夫社長(右)(写真=右:江田 健一)

 小松精練がセイコーエプソンから調達したインクジェット捺染機は1670万色に対応し、繊細な質感を表現できる。生地自体はポリエステルなのに、一見するとデニムや毛織にしか見えない生地がモナリザの代表作で、国内外のアパレル企業に卸している。

 細かいデザインが必要ない無地染めには、現時点ではインクジェット捺染が普及していない。小松精練の池田哲夫社長は「無地にもインクジェット捺染が普及すれば、水の使用量は今の14分の1に下げられる」と話す。

二酸化炭素で染める

 衣料品に不可欠な部材であるファスナーも、染色時に大量の水を使う。プールのような大型の枠に染料を溶かした液体を満たし、そこにファスナーを漬け込むことで色を付ける方式が主流だ。色を変えるごとに、枠を徹底的に水洗いする必要がある。ファスナーに付いた余分な染料も水で落としている。

 この水を削減するため、ファスナー大手のYKKは「超臨界流体」を使用した無水染色技術に取り組んでいる。

 二酸化炭素や水に高い圧力をかけながら高温にすると超臨界流体になる。液体の持つ「物質を溶かす性質」と、気体の持つ「広がる性質」の両方を備えた状態だ。

水を使わず、ファスナーを染める
●超臨界流体による染色の概念図
水を使わず、ファスナーを染める<br />●超臨界流体による染色の概念図
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 専用の機械に無色のファスナーを入れ、二酸化炭素と粉末状の染料を加えて圧力と温度を高める。すると機械内部では二酸化炭素が超臨界流体となり、溶かした染料と一緒に、膨らんだファスナーの内部に入り込み染色していく。圧力と温度を下げると、二酸化炭素は元の状態に戻り、ファスナー内部に入らなかった染料と一緒に回収できるという仕組みだ。染料を溶かす水が不要になり、染めた後のファスナーを水で洗浄する作業も必要ない。

 今年度から同技術を使った商品を試験的に販売する予定だが、課題は色の多様化だという。YKKのファスナーは通常品で数万色以上あるが、超臨界流体染色では使用できる染料の種類が少ないため、まだ限られた色しか生産できない。

 大量生産しているわけではないため、現時点では通常品より価格が高くなるという。ただ、「世界的に水資源の問題が叫ばれる中で、先行して取り組んでいかなければ手遅れになりかねない」(ファスニング事業本部の齋藤崇・染色技術チーム長)。

 アパレル業界は労働集約型の生産体制がいまだに主流だが、近い将来、現状のビジネスモデルが限界を迎える公算が大きい。環境問題への対応は持続的な経営の大前提となっている。水を汚さない染色技術が業界のスタンダードになる日はそう遠くなさそうだ。

(日経ビジネス2017年4月17日号より転載)