景気回復より社会保障。国民の意識が変わりつつある

山本:今って、若い労働者が組合活動に積極的に参加しないですよね。むしろ、労働組合の活動が煩わしいとか、面倒くさいという声は耳にします。それは彼らにとって、組合費を払う代わりにどういうメリットがあるのかなかなか見えないからだと思うんです。でもこうした連合の政策を聞くと、まさに自分たちに必要な政策を実現しようとしていることがわかる。また、現状抱えている職場の悩みが、連合の持っているノウハウで解決できる部分もたくさんある。

神津:そうですね。労働相談ダイヤルには、セクハラやパワハラ、賃金未払いなど、さまざまな悩みが寄せられています。そうした相談には法的な面も含め、解決策を提示しています。新たに労働組合をつくり、労働者の権利を主張していくということもありますね。

山本:そういう組合活動に対するお考えも踏まえて選挙の話に戻るんですが、最近の調査では有権者が選挙候補者に期待することとして、1位に社会保障がきているんですよね。

神津:これはいい傾向だと思います。以前はだいたい、景気回復など経済対策がトップでしたから。

山本:日本人の考え方も変わってきているのだと思います。しかし、社会保障の財源になるはずだった来年4月の消費税引き上げが、先月、再延期されてしまった。もちろん、増税の是非についてはいろんな議論はあろうかと思います。ただ、どんな政策をやるにも財政の裏づけは必要で、その財源がないからと、セーフティネットは引き下げられ、給付型奨学金など育児や教育関連の政策も後回しになってしまっているのが実情です。本当に必要なところに、お金がまわらない仕組みになっています。

神津:安倍首相は、足元の景気を支えるための経済対策として、10兆円規模とも言われる補正予算をつけると言っています。でも本当の意味での「経済対策」というのは、その先送りされている社会保障に、10兆円を使うということだと思うんですよ。

山本:2年半後には消費税の引き上げを実行すると言われていますが、おそらくそのタイミングでも上がらないでしょうね。消費税が景気を中折れさせて税収改善には繋がらないという議論も出ていますし、いわゆる「アベノミクスの出口戦略」のないまま、今回の選挙でも何となくアベノミクスの看板をちょっとずつ下げていっているという印象があります。

神津:難しいですよね。経済がパッとしないのはたしかにそうですが、いつになったら増税可能なくらいパッとするのかと。この状況でGDP600兆円なんていう目標を掲げること自体が、確信犯的ミスリーディングです。いつか経済がよくなる、という錯覚を与えている。

山本:どこまでいっても、経済が右肩上がりするという幻想から抜けられないんですよね。もちろん、できる経済政策はきちんと打った上で、なおゼロ成長、低成長なのは少子高齢化が進む以上仕方がないのですが、新産業ビジョンはここ何年も派手に打ち出し続けても経済全体を上向かせるほどの成果は出ていないのが気になります。

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