進出には懸念材料も

 テスラが6月に発表した18年第1四半期決算では、最終損益は過去最大の7億ドルの赤字となった。利益率25%でドル箱といわれる「モデル3」を目標の週5000台ペースで生産できなければ、収益に悪影響を及ぼす。さらにモデル3向けの追加投資や「モデルY」の新規投資を鑑みれば、今後テスラの資金繰りが厳しくなる可能性もある。

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 当初、完全に自動化して生産する予定だったモデル3は、生産ライン設計上の問題により、手作業での組み立てを余儀なくされている。また米ネバダ州のギガファクトリーで生産した電池及び駆動部品のうち、材料の欠陥による不良品率が4割ある、と米ビジネスインサイダーが6月5日に報道。米国で発生したトラブルを設計段階から改善する必要があり、中国でも同様のトラブルは懸念される。

 ゴールドマン・サックスによると、上海でのEV組立工場及び電池工場の建設コストは約40億ドルに上ると推測される。資金調達や生産性向上などの懸念材料もあり、電池を含むEVの中国生産は簡単に実現できるものではないといえよう。今回発表した上海進出の計画は株主の信頼を回復するための話題提供に過ぎない、といった見方もある。世界最大のNEV市場でいかに安定した生産体制を早期構築するか、テスラは正念場を迎えている。

 モデル3の生産遅延の影響によって、テスラに電池セルを供給するパナソニックは、18年3月期の電池事業が54億円の営業赤字となった。電池に限らず、EV基幹部品、化学素材及び生産設備をテスラに供給する日系企業は少なくない。今後日系サプライヤーは中国の産業政策及びテスラの生産動向に留意しながら、テスラ関連のビジネスに対応すべきだろう。

湯進(たん・じん)氏
みずほ銀行国際営業部主任研究員・博士(経済学)

2008年入行時より国際営業部に所属。自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国地場自動車メーカーや当局とのネットワークを活用した日系自動車関連企業の中国ビジネス支援を実施しながら営業推進業務に従事。また継続的に中国自動車業界に関する情報のメディア発信も行っている。(関連情報はこちら

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  • Mizuho Globalnews Vol.97「中国新エネルギー車市場の拡大とリチウムイオン電池メーカーの成長」(2018.6) みずほ銀行
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  • 日経産業新聞 「中国の燃費・NEV規制」(2018.5.21)