テスラ進出で3つのインパクト

 テスラが進出した場合、中国自動車業界に与える影響として、以下の3つが挙げられる。

 1つ目は、中国自動車業界のEVシフトを加速させることだ。テスラがブランド力と技術力でガソリン車を中心とする中国自動車市場に風穴を開ければ、地場自動車メーカーに危機感が広がるはずだ。そしてそれが中国のEVシフトをいっそう加速すると予想される。仮にテスラ「モデル 3」の販売価格が20万元(約340万円)台に収まれば、地場ブランドの中高級EVや欧米系PHEVと十分競争できる価格水準となる。BYDなど地場の大手NEVメーカーはテスラに伍する製品の開発を迫られる。「中国のテスラ」を目指す蔚来汽車など新興EVメーカーもコネクテッドカーで差別化を図っていくだろう。

 2つ目は、地場部品産業の技術力向上に好影響をもたらすことだ。テスラがひとたび上海をEV及び電池生産拠点にすれば、部品サプライヤーの上海周辺への進出が促され、中国におけるEVサプライヤーチェーンの高度化や地場EV部品技術の向上が期待される。「モデル3」に供給するサプライヤー約130社のうち、中国系一次サプライヤーは20社超、二次サプライヤー(材料系)は約50社ある、と地場の大手電池メーカーの幹部は語っている。特にNEVの性能を大きく左右するリチウムイオン電池の現地生産が、関連素材・設備の国産化や地場電池産業の技術力向上を加速すると考えられている。

 3つ目は、中国NEV業界の再編を促進することだ。NEV補助金政策を追い風に地場メーカーは中国NEV市場を寡占し続けている。18年6月時点で中国にあるNEVメーカーは355社。NEV電池メーカーも約140社もあり、乱立の様相を呈している。政府は20年までに補助金を段階的に廃止すると決定。テスラを含む外資系メーカーの参入を考慮すれば、市場競争はいっそう激しさを増し、NEVメーカー、電池メーカーに淘汰の波が押し寄せる可能性がある。製品・技術の高度化にもつながり、これは自動車・部品産業の育成と業界再編の双方を求める中国政府の思惑に合致する。

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