葉石:でも、少量に抑えるって難しいですよね。私の本にも、適正な飲酒量はエタノール換算で1日20g程度、ビールだったら中瓶1本、日本酒なら1合程度、と書いているのですが……。

小田嶋:大酒飲みから言わせると、それだったら飲まないほうがましですね。まんじゅうの皮だけ食べろって言われているような感じ。

浅部:ですよね(笑)。でも、最近の研究だとさらに適量が下げられてきているんですよ。

2018年5月11日、下北沢B&Bにて。

葉石:WHO(世界保健機関)の基準からすると、日本で適量とされている量は、少し多めだと聞いています。

浅部:日本人の体の大きさから考えると、ちょっと甘いんですよね。日本人はアルコールを分解する酵素の面から見ても、あんまり酒が強くないですし。そうすると、本当に1日1杯くらいの量になってしまうんです。アルコールの健康に対する害という観点からすると、自分に合った方法で酒量を制限するということしかないですね。

アルコール依存症は人生そのものを変えてしまう

葉石:では最後に、お二人にとって最高の飲み方ってなんでしょうか。

浅部:私は食べるのが好きで、食べ物に合わせた酒を飲むのが好きなんですよ。だから、食べ物と一緒に、おいしいなあと思いながら飲みたいです。あとは、人と楽しく会話しながら飲む。それが一番ですね。

小田嶋:私は最高も何も、もう飲めないですからね。吾妻ひでおさんのアル中体験を書いた漫画に、「アルコール依存症は不治の病気。一生治りません。ぬか漬けのきゅうりが生のきゅうりにもどれないのと同じです」というお医者さんのセリフがあるんですよ。

葉石:なんとわかりやすい例え……!

小田嶋:私は今、20年間酒をやめています。しかし、今でも一度飲んだら、依存症の状態に舞い戻る。これは確実です。だから皆さんにとっての最高の飲み方は、多量飲酒者(ハイリスク群)とアルコール依存症の間にあるレッド・ラインを超えないことだ、と言っておきましょう。

葉石:やはり、多量飲酒者であることと、アルコール依存症になってしまうことの間には、大きな壁があると。

オダジマはもう飛べない

小田嶋:その一線を超えると、帰ってこられないですからね。アルコール依存症になって酒をやめるというのは、元の生活に戻るということではありません。今までと別の人生を歩むということなんです。サッカー選手がサッカーできなくなってタクシー運転手になった、とかそれくらいの話。

 断酒を始めたころ、いろんな人に「酒をやめるってどんな気分ですか」って聞かれたんです。それで、何かの原稿に「翼をなくした鳥みたいなものだ」と書きました。本当に、鳥が歩いているような気分だったんですよ。

葉石:もともとは空を飛ぶように生まれたのに。

小田嶋:今でも飛んでみたいと思うけれど、そうすると必ず墜落するってわかってるから、やりません(笑)。だから、そんなことにならないように皆さんは気をつけてください。

(おわり)