画像認識で魚の体重を推定

NEC
養殖の餌の量や魚の体重を可視化

NECはいけすでの養殖にIoTを活用するシステムを開発。
餌の量や魚の育成を管理する。食べ残しによる海洋汚染も減らせる

 カキやノリとは違い、ブリやマグロなどはいけすで餌を与えて育てる。NECはこうした給餌型の養殖に活用できるシステムを開発している。天然魚が枯渇する中、世界の漁業生産量の約4割を養殖魚が占めている。安定的に質の高い養殖魚を確保することが食料安全保障上も重要だが、従来は餌の量や魚の体重を厳密には定量管理しておらず現場の判断に任せられてきた。

 NECはまずデータの収集と高度化に乗り出した。市場では魚の重さで取引されるため、体重の把握を重視した。体重は体長から推定する。従来はいけすにカメラを沈めて動画を撮影し、測定に適した魚を目視で探し出し、口や尾の特徴点などから体長を測っていたが、時間がかかるうえ作業者ごとに誤差が出るという難点があった。

 そこでNECは独自の画像分析技術を開発した。いけすにカメラを沈めて動画を撮影。ディープラーニング(深層学習)によって測定に適した魚と特徴点を自動抽出し、体長を自動測定する方法だ。従来70匹の測定に60分かかったのに対し、555匹を10分で測れるようになった。

 「いけすの全体像を正確に把握することで、養殖業者は出荷時期を判断できる。また、適切な給餌量が分かれば餌の食べ残しが減り、海洋汚染を減らせる。養殖コストの70%は餌代が占めるためコスト削減効果もある」と同社ビジネスクリエイション本部エキスパートの早坂真美子氏は指摘する。

 19年度からの商用サービス開始を目指している。利用者が動画をNECのサーバーにアップすると、いけすの魚の体長の測定・分析リポートが提供される仕組みを検討している。「将来的にはデータ収集を自動化し、AI(人工知能)が育成や給餌のモデルに従って指示を出すようにしたい。魚価の高い時に魚を出荷する在庫管理ができるようになる」と早坂氏は展望を話す。

 いけすの管理では、NTTドコモも17年7月、双日とマグロ養殖でIoTとAIを活用する実証実験を行う覚書を締結した。AIで給餌の量やタイミングを最適化し、出荷時期の決定や売り上げ予測に役立てる。「いずれ流通業にもIoTを導入したい。漁船が浜に着くまでに魚種と漁獲量が分かれば小売業者がスマホで競りに参加できる仕組みが作れる」と山本氏はみる。

KDDI
定置網の漁獲量を推定、取り過ぎを防ぐ

KDDIは定置網の漁獲量を予測するシステムを開発中。
取り過ぎを防ぎ、先物取引も可能に

 天然水産物の漁業にもIoTが導入され始めた。KDDIは定置網の漁獲量を予測し、漁師が網を引き揚げるタイミングを判断するシステムを開発中だ。あらかじめ漁獲量が分かれば、船を出して空振りすることがなく、燃料コストやCO2の削減につながる。東松島みらいとし機構とKDDI総合研究所などがセンサーなどを搭載したブイを開発し、宮城県石巻湾で実証実験を行った。

 水中カメラで定置網の中を撮影し、基地局から送ったデータをサーバーに蓄える。漁師の知見も手掛かりにしながら、水温や塩分濃度、気象庁の公開情報、例年の漁獲量パターンなど500以上のパラメーターから漁獲量推定に使える70パラメーターを絞った。

 17年度からは過去2年間のセンサーデータを解析して漁獲量を定量的に予測するプロジェクトを始めた。「漁獲量が推定できれば、漁獲枠の規制と照らして取り過ぎを防いだり、どれだけ資源を残すべきかを考えられる。漁業をサステナブルにできる」とKDDI ビジネスIoT推進本部地方創生支援室マネージャーの福嶋正義氏は話す。