課題はコストのみ

 国内で1990年代からLiDARの研究開発を続けているのがデンソーだ。2012年にはダイハツ工業の軽自動車「ムーヴ」にデンソー製のLiDARが採用された。自動車各社が自動運転用に検討しているものと違って鏡を回転させる機能はなく、読み取れる角度も限られるが、小型化と低コスト化によって軽自動車への搭載を可能にした。

 同社は現在、ヴァレオと同じく回転機構を持つタイプを開発中だ。「自動運転の高いレベルを実現するにはLiDARの採用を自動車メーカーに勧めている。技術的にはほぼ確立しており、後はコストとの折り合いになる」。同社の松ヶ谷和沖ADAS推進部長はこう語る。

 LiDARの課題は1点しかない。それはコストだ。そもそも、自動車業界でLiDARが初めて注目を集めたのは、2012年に米グーグルが自動運転試作車に採用したことだった。ベンチャー企業、米ベロダインが開発したものだ。

 価格は約900万円。両手で持たなければならないほどの大きな装置をクルマのルーフから飛び出すように設置しなければならなかった。価格と大きさから、「誰があんなモノを載せたクルマを買うんだ」と当時の業界関係者はベロダインのLiDARを皮肉った。

 それから数年。低価格化と小型化は急激に進んでいる。ベロダインが2015年に発表した新製品は、従来よりレーザー光線の数を少なくすることなどで100万円を切る価格を実現。同社はもう1桁安価な新製品を開発中とみられる。今年8月には、米フォード・モーターと中国のIT(情報技術)大手バイドゥが共同で約150億円を出資。市販車にベロダイン製のLiDARが搭載されるのを疑う業界関係者は少ない。

<b>米グーグルが試作した自動運転車。ルーフの上に米ベロダイン製のLiDARが搭載されている(左)。ベロダインのLiDARは年々、小型化と低コスト化が進んでいる(右)</b>(写真=左:Justin Sullivan/Getty Images、右:Ethan Miller/Getty Images)
米グーグルが試作した自動運転車。ルーフの上に米ベロダイン製のLiDARが搭載されている(左)。ベロダインのLiDARは年々、小型化と低コスト化が進んでいる(右)(写真=左:Justin Sullivan/Getty Images、右:Ethan Miller/Getty Images)

 ヴァレオも低価格化を実現しつつある。先進開発部門を率いるギョーム・ドゥボシェル副社長は「(量産化で)コストは5年前の開発初期の200分の1まで下がる」と自信を見せる。

 他の最新技術と同じく、まずはアウディをはじめとする高級車に搭載される見通しのLiDAR。一層の低コスト化は、普及価格帯のクルマに採用されるかどうかにかかっている。

(日経ビジネス2016年10月31日号より転載)