カメラとレーダーの良いとこ取り

 現在、自動ブレーキや車線維持機能などに使われているクルマの「目」は、カメラとレーダーが主流だ。ただし、それぞれに弱点がある。レーダーは、電波を飛ばし跳ね返ってきた波を計測するもの。距離の計測は得意だが、電波の反射は光に比べて弱く、精度高く周囲を見るのは苦手だ。

 カメラは周囲の光を取り入れて像を可視化するもので、解像度が高く人なのかクルマなのかを認識するのが得意。ただし、波を反射させていないので、距離の計測には不向きだ。各社が計算式を使って距離を測る技術を開発しているが、あくまで推測のため精度は比較的低い。霧が出た場合などには能力が落ちるという課題もある。

 一方のLiDARは、これら2つの長所を持ち合わせる。レーザー光線を発射してその跳ね返りを計測するため距離が正確に測れ、レーダーで使用している電波よりも解像度が高い。つまり、「距離が測れて高精度に見える」。一言で表せば、これがLiDARの特徴だ。

レーダーとカメラの良いとこ取り
●レーダー、カメラ、LiDARの性能の比較
レーダーとカメラの良いとこ取り<br /><small>●レーダー、カメラ、LiDARの性能の比較</small>
注:仏ヴァレオの資料に本誌が加筆
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 もっとも、多くの自動車メーカーは既にカメラとレーダーの併用で、弱点を克服しようとしている。しかし、それでも難しいことがある。空いているスペースの発見だ。LiDARの高い精度があれば、「そこに物がある」という段階から「物がない=スペースがある」という段階にステップアップできる。

 既に実用化されている自動ブレーキでは、物があることを認識して止まれば機能としては十分だったが、自動運転の実現には、車線変更や緊急回避のためにスペースを見つけなければならない。これが、この数年でLiDARが注目を集めるようになった理由だ。

 レーザーはもともと、断層や氷河の位置などを航空機や衛星から計測するといった科学分野が主な用途だった。米調査会社マーケッツ&マーケッツの予測では、2015年に約1兆4000億円だったレーザーの世界市場は、自動車用途の伸びにより年率10%以上で成長し、2022年には約3兆3000億円まで拡大する。

 ヴァレオはそのニーズを嗅ぎ取って、2010年にLiDAR技術を持つ独イベオとの提携を決め、技術を磨いてきた。冒頭の試作車のほか、LiDARを前後に計6個搭載した試作車も開発中。見据えるのは完全自動運転だ。

 実際に、多くの自動車メーカーが、次世代の自動運転車にLiDARの採用を計画している。

 独アウディはその筆頭だ。「(条件付き自動運転である)レベル3を実現するためには、カメラとレーダーでは能力が足りない」。アウディで自動運転を担当するエンジニアはLiDARが必須だと語る。

 同社は来年、市販する旗艦車種の新型「A8」にLiDARを搭載し、レベル3の自動運転を実現する。渋滞時限定ではあるが、運転者が前方を監視しなくてもよい状態となる。関係者によればLiDARを前方に1つ搭載する予定で、ヴァレオ製とみられる。

 トヨタ自動車や日産自動車、ホンダの日本勢も注目している。3社とも試作車にLiDARを搭載し、自動運転機能を実装していることからも明らかだ。

<b>独アウディの自動運転試作車。前方にLiDARを搭載している。アウディはLiDARを自動運転に必須のセンサーと位置付ける</b>
独アウディの自動運転試作車。前方にLiDARを搭載している。アウディはLiDARを自動運転に必須のセンサーと位置付ける

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