後ろ向きの言葉を「クリア」する

 書きなぐるノートの冊数が進むに従って、「自分の人生をとどまらせる言葉」の発生をコントロールできれば、自分の頭の中で建設的な思考が増え、心身の状態は改善するのではないか、と気付いた。

 それ以来、「人生をとどまらせる言葉」をコントールするために、瞑想やヨガ、あるいはビジネス書に書かれているメンタルトレーニング手法を探究し続けてきた。様々な手法を試してきたが、当時から今に至るまで、私がやっている主な手法は単純で次のようになる。

 ネガティブな思考をそのまま言葉にしてコピー用紙に書き付け、すぐにクシャクシャと丸めてゴミ箱に放り込む。「そんなことで」と思われたかもしれないが、これだけで案外、気分が切り替わる。気分が切り替わることで「人生をとどまらせる言葉」のボリュームは下がり、声を潜めてくれる。

 最近は「ブギーボード」(キングジム製)という携帯型の電子黒板を持ち歩いており、ここにネガティブな感情を書きなぐり、本体上部の消去ボタンを押して消す、というやり方も気に入っている。消去ボタンを押すと「クリアした」気分になる。

 「サイコ・サイバネティクス」と呼ぶメンタルトレーニングの手法の中で、このような「忘れる」「クリアする」動作が提案されている。サイコ・サイバネティクスは米国の形成外科医だったマックスウェル・マルツ氏が開発したもの。同氏の書籍は日本語訳が複数出ているので興味を持たれた方は参照していただきたい。

ペンや鉛筆で手書きするほうが爽快

 「頭の中に浮かんでくる言葉を書きなぐる」ことを15年ほど続けてみて、重要な点は「文字を手で書くこと」だと思っている。手にペンや鉛筆を持ち、一つひとつの文字を書きつけていくほうが、パソコンのキーボードで入力するよりも爽快感を得やすい。

 文字を書きつける媒体はやはり紙がベストである。高級な綴ノートを持ち歩いてもいいし、一般的なコピー用紙も手軽で使いやすい。

 散逸しやすいコピー用紙に書いた内容を記録しておきたいと感じたら、スマートフォンのカメラ機能で撮影し、クラウドサービスのEvernoteに記録している。ブギーボードの内容についても同様だ。

 ただし記録を取り出して振り返ることはあまりない。大事なことなら手で書いただけで内容が記憶に定着するようだ。

手書きの道具の例。左はA4のコピー用紙。ラフに書き散らしたいときに使う。左から2番目はA4サイズ無地のルーズリーフ。仕事用のノートとしても使い、保存したい場合にはバインダーに収める。中央にあるのが携帯型電子黒板「ブギーボード」(キングジム製)。上部に円形の消去ボタンがある。右は携帯型のノート型ホワイトボード「CANSAY ヌーボード」(欧文印刷製)。
手書きの道具の例。左はA4のコピー用紙。ラフに書き散らしたいときに使う。左から2番目はA4サイズ無地のルーズリーフ。仕事用のノートとしても使い、保存したい場合にはバインダーに収める。中央にあるのが携帯型電子黒板「ブギーボード」(キングジム製)。上部に円形の消去ボタンがある。右は携帯型のノート型ホワイトボード「CANSAY ヌーボード」(欧文印刷製)。

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