オーラの大きさや色の濃さなどで、犯罪行為に発展する危険度を数値化。あらかじめ設定した値以上の危険度を示した人物を検知すると、システムが警告を発する。警備員などが該当者に声をかけたりボディーチェックをしたりすることで、犯罪の発生を未然に防止できるわけだ。

 2~6秒程度の動画を解析すれば、映っている人物の精神状態を判断できるという。警備の現場でリアルタイムに不審者を検知するのはもちろん、事前に録画した映像や「YouTube」などネット上の動画データを分析することも可能。素早い容疑者逮捕につながりそうだ。

 DEFENDER-Xの価格はカメラ2台と解析ソフトの組み合わせで、250万円から。日本でも警察機関が同技術に注目し、既に試験的に運用を始めているようだ。国内の大手警備会社も自社の警備システムとDEFENDER-Xを連携させ、新たな不審者検知システムの製品化を急いでいる。

 進化しているのはソフトウエアだけではない。解析の基となる画像が鮮明であるほど、多くの情報が読み解けるようになる。監視カメラ自体の機能向上も急務だ。

 ここに商機を見いだしたのが、カメラ世界最大手のキヤノンだ。同社は4月上旬からネットワークカメラ「VB-M50B」の販売を始める。最大の特徴は、夜間でも鮮明なカラー映像を撮影できる点だ。デジタル一眼で培った光学技術を応用し、遠方からズーム撮影する場合でも画像が暗くならないよう工夫した。月明かり程度の環境でも100m先の被写体をカラーで鮮明に撮影できるという。

 キヤノンによると、人間の目では見えない夜間の不審者も、カメラを通じて検知できる。港湾の設備管理や河川の防災など、様々な用途向けに売り込んでいく考えだ。

ネットワークカメラが成長の主役に
●監視カメラの世界市場の推移
出所:矢野経済研究所

 矢野経済研究所によると、監視カメラの市場は今後右肩上がりで伸びていく。なかでも、通信機能を備えたネットワークカメラは前年比2ケタ増の成長率で伸びることが期待されている。出荷台数は2017年にアナログカメラを抜き、2018年には2600万台程度に拡大する見通しだ。「これからは単体製品ではなく、ソフトと監視カメラを組み合わせたシステム販売が主流になっていく」(矢野経済研究所)。

 ネットワークカメラの市場が拡大する一方、新たな懸念も生じてきた。データ量の増加だ。通信回線の逼迫や、蓄積容量の増大に伴う管理コストの増大が指摘されている。

カメラの頭脳で人の顔を検出

 そこでパナソニックが提案しているのが、「インテリジェント映像監視システム」だ。セキュリティシステム事業部の寺内宏之・主幹は、「撮影対象を検知できる機能を監視カメラ自体に搭載していく」と語る。

 開発したのは、カメラ本体のみで顔の照合ができる「顔ベストショット技術」。従来の監視カメラでは、撮影した全画像をサーバーに送信し、分析していた。データが膨大になるため、画像を圧縮し送信するケースも多かった。

 顔ベストショット技術では、人物の顔をカメラが自動で検出し、画像の解析に必要な部分(ベストショット画像)のみを切り出しサーバーに送信する。画像の圧縮も不要で、高精細かつ認識性能の高い画像をサーバー側へ伝送できる。ネットワークの伝送負荷は従来の10分の1に削減できるという。既に特許出願済みで、2014年から販売を開始した。

 道路などに設置すれば、通過するクルマのナンバープレート画像だけを自動で検知しサーバーに送信することもできそうだ。盗難車や逃走車のナンバープレートを効率的に照合でき、画像データの蓄積容量も少量で済む。

 街頭や商業施設、オフィスビル、工場など、周りを見渡すと至るところに監視カメラが設置されている。プライバシー侵害の懸念はあるが、ある程度は安全を優先すべきなのは間違いない。東京五輪まで残り4年。監視カメラシステムの進化は、ソフトとハードの両面で加速する。

(日経ビジネス2016年4月4日号より転載)