バックドアにCFRPを適用

 アルミニウム合金ほどではないがCFRP(炭素繊維強化プラスチック)も車体への適用が進んできている。例えば、トヨタ自動車は今年2月に発売したプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」のバックドアの骨格にCFRPを採用した(図5)。同社の技術者によれば、アルミニウム合金を採用した場合に比べて、約40%軽量化できたとしている。

図5トヨタ自動車の「プリウスPHV」とそのバックドア
HV(ハイブリッド車)の4代目「プリウス」をベースとするプリウスPHV。トランクルームの下に電池を搭載している。リアの衝撃吸収ゾーン確保のために車体を後ろに長くした。バックドアの骨格にCFRPを採用しているのが特徴

 同社がバックドアの骨格にCFRPを適用したのは、第1に、タクトタイム(工程作業時間)が短くなり量産車への適用が可能になってきたため。第2に、バックドアの骨格がCFRPの剛性や強度を生かしやすい構造のものだったからだ。先の技術者によれば、採用したのは三菱レイヨンの炭素繊維(CF)入りSMC(シート・モールディング・コンパウンド)。母材となる熱硬化性のビニールエステルに20~30mmの炭素の長繊維を入れたプレス成形可能なシートで、プレス成形のタクトタイムは3~5分の間という。月産5000台は造れる速さとしている。

 バックドアの骨格がCFRPの剛性や強度を生かしやすいというのは、フロントフードのような面状のものと違って構造が複雑だからだ。面状であると、表面積が決まっているため板厚で勝負するしかない。ところが、構造が複雑なものは、中に使われる構成品の構造を省いたり、形状を単純にしたり、リブを減らしたりと、CFRPの剛性と強度をうまく生かした構造にできる。

 例えば、樹脂製の一般的なバックドアの骨格の場合、後面衝突への安全性を確保するために鋼材の補強材が入っている。また、開口部の立ち壁には、立ち壁が傾いて開口部が広がらないように付け根の部分を補強している。CFRPの場合、そうした補強材を省略したり、立ち壁の開き防止をリブでまかなったりすることが可能になる。

 さらに、同技術者がCFRPの利点として挙げるのが、「樹脂ならではの深絞りが可能なこと」。実は、今回のプリウスPHVのバックドアの骨格でも、デザインが決まった段階でCFRPを使うしかなかったと打ち明ける。アルミニウム合金を適用する場合、部品を分割し接合するなど構造が複雑になる。

 材料と製法を工夫すれば、さらに軽い材料の適用も可能となる。

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富岡 恒憲
日経テクノロジーオンライン 副編集長

(日経ビジネス2017年4月3日号より転載)