NOxの削減対策は2つある。一つは、EGR(排ガス再循環)。排ガスの一部を大気へ放出せずに回収して、エンジンの燃焼室に再度戻す仕組み。NOxは、燃料と空気の混合ガスが高温で燃焼することで発生する。温度が低い排ガスを入れることで燃焼室内の温度が下がり、NOxの発生を抑えられる。

 もう一つは、重油に水を混ぜた「エマルジョン燃料」の採用。これを使うと通常の燃料と比べて燃焼温度が下がるため、NOxが発生しにくくなるという。

 EGRだけでも新規制をクリアできるが、燃費を改善するためにエマルジョン燃料と組み合わせている。一般に燃費を良くしようとするとNOxの排出が増える。そこで、2つの対策でNOxを減らすことで、燃費性能を高めつつ、NOx規制をクリアできるようにした。

 NOxを取り除く方法としては、ディーゼル車などに採用されている「尿素SCR(選択触媒還元)」も知られている。尿素水の化学反応を利用する排ガス浄化技術だが、装置が大きく、運搬できるクルマの台数が大幅に減るため採用しなかった。

オールジャパンでLNG燃料船

 燃料転換では、SOxの排出を心配しなくて済むLNG(液化天然ガス)という選択肢もある。むしろ、米国のシェールガス開発によって価格低減が期待されるLNGを次世代燃料として期待する向きは多い。ただ、LNGは供給インフラが整っていないため、燃料として使う船の開発は進んでこなかった。

<b>日本郵船のLNG燃料船「魁」(上)。オールジャパンの技術を投入して次世代燃料として期待されるLNGを使う。LNGを気化して圧力を調整するため、気化したLNGをためるタンクも内部に持つ</b>
日本郵船のLNG燃料船「魁」(上)。オールジャパンの技術を投入して次世代燃料として期待されるLNGを使う。LNGを気化して圧力を調整するため、気化したLNGをためるタンクも内部に持つ

 そうした中、日本郵船は国内初となるLNG燃料船「魁(さきがけ)」を2014年に竣工した。魁は、大型貨物船の入港補助などの用途に使う小型のタグボートである。

 数年前から、子会社で造船を手がける京浜ドック(横浜市)やエンジンメーカーの新潟原動機(東京都千代田区)などオールジャパンの技術で開発してきた。日本郵船燃料グループの篠崎宏次グループ長は、「海運会社として環境規制への対応は待ったなしの状況にあった」と振り返る。

 日本郵船は今後、LNGの販売に本格的に乗り出す。LNG燃料船を増やすに当たり、LNGの価格変動リスクを回避するのが狙いだ。約900隻の船を所有する同社は、年間約540万トンの燃料を購入している。その費用は多いときで年間2000億円以上。燃料価格が収支に与える影響が大きいため、LNGの購入価格が上がった場合、LNGの販売価格を上げることによって燃料代の増加を相殺できるようにする。

 魁は、LNGと重油の両方を使えるディーゼルエンジンを搭載した。マイナス162度にして液体で貯蔵しているLNGをエンジンに供給する際、気化して圧力を調整する必要がある。そのため、気化器と、一時的に気化したLNGをためるタンクを追加している。こうすることで、あらかじめ気化して圧力を調整しておいた燃料を、エンジンの出力に応じて素早く供給できる。

 日本郵船はLNGを燃料に使う自動車運搬船を2隻建造した。篠崎グループ長は、「船に燃料を供給する際、漏れを防ぐためにどういう手順で実施すればいいかなど、タグボートで得た知識は大きい。今後のLNG燃料船の運航やLNGの販売に生かしていく」と言う。

次ページ GEは火力発電技術を応用