現在のパンゴリンのロボットの移動の仕組みは、工場などで使われる多くのAGV(無人搬送機)と同じく、基本的に磁気テープによる誘導である。レストラン内の通路の床面に敷設したテープに沿って、決められた経路を回る。

 これに対し、近日投入予定の新型ロボット「Amy(艾米)」では、自動的に屋内地図を作製し、自己の位置を特定するSLAM機能を搭載した。ロボットの足元に搭載した北陽電機(大阪市)製の2次元LIDAR(レーザー光線を使って周囲の障害物との距離を測る技術)により、レストラン内の地図を自動的に構築。床面のテープなどは不要で、ガイドなしで走行できるようにした。店舗内のテーブルのレイアウト変更にも柔軟に対応しやすくなる。

 飲食店では営業終了後などに床面を水で清掃することが多いため、「床に敷設した磁気テープが?がれたり、破損したりする問題があった」(丁氏)。こうした問題を解決するため、同社は新型ロボットにSLAMの導入を決めた。

 ガイドなしでの自己位置特定の方法については、LIDARによるSLAM以外にも複数の手段をパンゴリンは検討した。無線LANによる方式、UWB(超広帯域レーダー)による方式、天井に設置したマーカーをカメラで読み取る方式などである。

 「無線LANやUWBによるものは、レストラン内の通路を移動する用途では自己位置特定の精度が不十分だった。天井にマーカーを設置するタイプは、磁気テープと同様、設置工事が必要となるのがネック。このため最終的にLIDARによるSLAMを選択した」(丁氏)という。

 AmyのSLAM機能は、ROS(ロボット向けの基盤ソフト)を利用した。ハードウエアとしてはラズベリーパイ(シングルボードコンピューターの一種)ベースのボードを内部に搭載しており、この上でROSを動作させている。

 障害物検知用に腕の先端と膝の付近に複数の超音波センサーを搭載する。胸の部分には、配膳のための各種設定などを行うタッチパネルを備える。この部分のユーザーインターフェースはアンドロイドOSで構築してある。なお、SLAM機能はレストラン向けのAmyだけでなく、受付業務などに向けたサービスロボット「Alice」や家庭向けロボット「Snowman」にも同様に搭載している。

来店客が動き回っても安全

 LIDARによるSLAMを採用するなど、一部で先進的な機能を取り込んでいるパンゴリンだが、これら一連の新型ロボットの開発には、日本のロボット研究者が技術協力している。電気通信大学大学院情報理工学研究科教授の長井隆行氏の研究グループである。

 当初、磁気誘導型のロボットのみ手掛けていたパンゴリンは、より高度なロボット技術のシーズを探して2015年6月、電通大のTLO(技術移転機関)業務を手掛けるキャンパスクリエイトに技術を照会した。パンゴリンのCTOを務める丁氏は電通大の大学院に在籍していたことがあり、知人がTLOのキャンパスクリエイトに勤務していたことから、電通大を選んだ。

 その結果、ロボットを研究していた長井氏を紹介され、両者の面談の結果、共同研究がスタートした。「人が多くいるレストランのような実環境でサービスロボットを商用レベルで運用できる機会は、研究者としても非常に魅力的だった」(長井氏)という。パンゴリンのSLAM搭載の新型ロボットの出荷が中国国内で始まれば、そのロイヤルティー収入も電通大や長井氏の研究室に入ってくるようになっている。