文書データ改ざん問題、ブロックチェーンを使うと…

 ここで、技術的な視点でブロックチェーンを考えてみます。前述したように、ブロックチェーンはこれまでにはない価値をいくつも社会に提供してくれる可能性を秘めています。ただし、その可能性をすぐに理解するのは容易ではありません。なぜなら、ブロックチェーンは基盤技術であるため、その価値はかなり“技術的な”価値であり、一般の人が直接感じる価値ではないからです。

 例えば、ブロックチェーンはいわゆるデータベースの役割を果たすわけですが、一般のデータベースと違って、チェーンネットワークに参加する多くのコンピュータに分散してデータを保存します。仮に100台の端末がネットワークに参加した場合、100台にデータが保存されているということになります。そのうちの1台のデータが改ざんされても99台には元のデータがあるので、どっちが正しいデータかすぐに分かるわけです(少なくとも50%超、この例では51台以上のデータを同時に改ざんすると、「改ざんを成功」できるという問題は残りますが)。

 現実にビットコインのネットワークには、世界中のコンピュータが参加しデータを分散しています。そのため、データを改ざんするのは至難の業です。その他にも、改ざんを検出する仕組みなどがあり、要するに「データの改ざんがかなり難しい」と考えられるというわけです。ブロックチェーンにはシステム運用のコスト削減など様々なメリットがありますが、一番大きいのはこの「データ改ざんの困難さ」と考えてよいでしょう。

 この「データ改ざんの困難さ」について見方を変えると、世界規模での公正なデータ共有という価値が浮かび上がってきます。一つ私のアイデアを述べると、例えば今年日本で問題になっている「文書データ改ざん問題」ですが、あれはブロックチェーンを利用すれば即時に解決します。ブロックチェーンに登録したデータは改ざんが難しい上に、パブリックに参加できるネットワークにすれば、国民の誰もがネットワークに参加して登録時点の文書データを保存することができます。

 ここで一つ誤解のないように断っておきます。この場合、本当に文書データをブロックチェーンに保存するわけにはいきません。データ量が膨大になる上に、そもそも文書の内容を全てさらしてしまうからです。そこで、文書データのハッシュ値をブロックチェーン上に記録します。ハッシュ値とは、データをハッシュ関数で「要約」した256ビットなどの小さなデータですが、元のデータが1ビットでも変わると、そのデータのハッシュ値も変わるという性質があります。そして、ハッシュ値なら、元の文書データを復元することは不可能です。つまり、文書の内容がさらされることはありません。

 結果的に、元のデータをちょっとでも書き換えるとハッシュ値も変わるので、例えば1年前にブロックチェーン上に記録された文書データのハッシュ値と、現在ある文書データのハッシュ値を比較すれば、そのデータが1年間に改ざんされたかどうか検証することはできます。1年前の文書データのハッシュ値は全世界で共有されているので、ハッシュ値も改ざんすることは事実上不可能です。

 あとは、文書やデータが書き換わったことが確実に誰でも検証できるという、このブロックチェーンという仕組みを導入するのか? という人間世界の話になります。そこは私の専門外なので、それに関して述べるのは控えます……。