軍事目的で開発されたドローンが今、宅配や農薬散布などの民間用途で使われ始めている。一方で、危険物を運搬できることから、テロの道具として悪用される懸念も出てきた。そんな「悪玉ドローン」を撃退するため、飛来を検知するシステムの開発が進む。

<b>2月28日開催の東京マラソンでは、上空に不審なドローンがいないか見守った</b>(写真=的野 弘路)
2月28日開催の東京マラソンでは、上空に不審なドローンがいないか見守った(写真=的野 弘路)

 国内最大規模のマラソン大会「東京マラソン」が2月28日に行われ、約3万7000人のランナーが都心を駆け抜けた。臨海副都心に設置されたゴールには、テロに備えて警備員が配備されていた。しかし、空からの襲撃に備えてもう一つ、ある「助っ人」が人知れず稼働していた。ドローン検知システムだ。

 ドローンとは、複数の回転翼で飛行する小型無人機のこと。敵地の偵察や空爆といった軍事目的で1990年代から開発が始まったが、近年は宅配や農薬散布といった民間利用も進み出した。

 生活を豊かにする活用の研究が進む一方で、盗撮やテロ攻撃の道具として悪用されるケースも出てきた。2015年4月には、首相官邸の屋上にドローンが落下しているのが見つかり、大きな騒動になった。ドローン分野のビジネス展開に詳しいトーマツベンチャーサポートの瀬川友史氏は、「液体を入れたペットボトルを運べる能力があるものもある。内容物次第ではテロを起こすことも十分に可能」と指摘する。

 ドローンが悪用されるようになったことで、重要施設や大規模イベントにおける空の警備が急務となった。そこで注目されているのが、不審なドローンを検知するためのシステムだ。国内外で開発が進み、日本でもいくつかの開発案件が登場し始めている。

俊敏なカメラでドローンを追跡

 東京マラソンで使用されたシステムを開発したのがセコム。2016年1月にドローン検知システムとして発売した。

 対象エリアに専用のレーダー2台とカメラ2台を設置すると、半径100m内に侵入した飛行体を検知できる。対象は、テロで使用される可能性の高い直径50cm以上のドローンだ。

 検知のための仕組みはシンプル。レーダーアンテナから常に照射されている電波が、あるはずのない飛行体にぶつかると、反射してアンテナに電波が戻ってくる。この戻ってくるまでの時間を計測することで飛行体の大まかな位置を把握。あとは、2台のカメラでドローンを追跡しつつ、対策を打つ。

 幸い東京マラソンの開催中に不審なドローンは現れなかったが、見つかった場合は警視庁が結成するドローン捕獲チームが出動する予定だったという。捕獲チームは、網で不審なドローンを捕らえる訓練をしていた。